持合株式の解消に向けて

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川本 裕子(かわもと・ゆうこ)
早稲田大学ビジネススクール教授。 東京大学文学部社会心理学科卒業。オックスフォード大学大学院開発経済学修士課程修了。東京銀行、マッキンゼー&カンパニー東京支社、パリ勤務等を経て現職。
現在、三菱UFJフィナンシャルグループ非執行取締役、東京海上HD社外監査役、トムソンロイタートラスティディレクターを兼務。これまでに金融審議会委員、金融庁顧問(金融タスクフォースメンバー)、内閣府統計委員会委員などの政府委員や、取引所・銀行・証券・製造業・IT企業・商社等の社外取締役を務めてきている。

「本気度」の重要な試金石が株式持合の問題だ。コーポレートガバナンス・コードには、「中長期的な経済合理性や将来の見通しを検証し」とその見直しを求める項目がある。株式持合は、経営規律の緩みを与え、低収益体質の温床であると投資家から厳しい目を向けられてきた。

 株を持ちあっていれば、「お互い様」なので、配当などのリターンを意識しないですみ、結果として日本企業の資本の低効率性につながっているという指摘だ。持合に関して各社は、方針を開示しているが、その企業の開示への投資家の批判は続いている。政策株式の保有と保有対象企業との取引の因果関係の説明がない、特定株主への利益供与にあたるのではないか、リターンとリスクの検証についての具体的内容の開示がない、株価急騰時の考え方の開示例がない、などの指摘だ。

 持合株式は「持っている」のか、「持たされている」のか、逆に「持たれている」「持ってもらっている」「持たせている」などのいろいろなパターンがあり、企業自体にコントロールできる術が限られているのが一般的だ。流動性がないため、金融機関にとっては極めてリスクの高い資産になっていることはここで繰り返すまでもない。

 これだけ旗色が悪くても持合いが解消されないのは、「知らない人に株式を持たれ、いつ敵対的買収されるかわからないより、前からよく知っている人に持ってもらうと安心」という意識なのだろう。熾烈な営業競争の中で企業同士で株式を持ち合っていれば、取引確保は安全、という現場感覚も存在する。

 しかし、株式の持合い関係の上のビジネスは本当に健全なのか、株式保有の見返りの取引より、商品やサービスに付加価値を感じてもらってこそビジネスが成長するのではないか、という根本論が今一度認識されるべきだろう。通常、持合対象には高収益を出せる企業は少なく、自社以外の株式価格の変動によって経営に大きなリスクを被るのは決して健全とは言えない。持合株式の解消がない限り、投資家の厳しい目線は続く。