第1の手法は、チーム内の異なる役割を検討し、それぞれが何を話し合いにもたらすかを浮き彫りにすることだ。すなわち、各役割には達成すべき課題があることをチーム内で明らかにするのだ。
たとえば、営業部門と制作部門の部門横断型の会議では、制作部門からの出席者は標準化と管理、効率性をいっそう推し進めようとするだろう。一方、営業部門からの出席者は、これとは正反対に、もっと柔軟にカスタマイズし、機敏に反応することが大事だと主張する。営業と制作のそれぞれの担当者が自分の仕事をしっかりとこなしていれば、最適化されたソリューションにたどり着く過程で当然互いに対立する。一方は個別の顧客ニーズにできるだけ応じられるように奮闘しているし、他方は品質管理とコスト効率の改善につながる標準化のために格闘しているのだから。
チーム内の各自の役割とそれぞれの異なる動機を話し合ううちに、「そういうことか!」と気づきの瞬間が訪れるのがわかるだろう。「あの人と議論をするのも仕事のうち、ということか!」。そう!「しかも彼が私に反対する理由は、嫌な奴だからとか、私を困らせようとしているからではないということ?」。そのとおり!
チームの構成が適切であれば、各メンバーがそれぞれ特有の目的のために奮闘するはずである。黙従するのではなく、方向性の異なる意見を主張することによって、各自の任務を遂行している(と同時によきチームプレーヤーになっている)のだ。チーム内にすでに生じている緊張を正常化する時間さえつくれば、チームメンバーたちが自由に異論を唱え、押したり引いたりしながら、最良の答えを得るために懸命に奮闘する環境が整う。
第2の手法は、パーソナリティ評価ツールまたはスタイル評価ツールを使って、注意を払う対象が人によって異なるのを明らかにすることだ。役割から生じる違いに加えて、チームメンバーは各自の性格に基づき、同一の問題について異なる視点を持っているはずだ。チームを対象とした評価結果を検討しながら、パーソナリティの多様さがもたらす緊張に目を配るとよい。とりわけ、チーム内の少数派のパーソナリティに注目しておこう。チームの思考が偏ってきたときに率直に意見を述べる責任を、少数派の視点を持ったチームメンバーに託すとよいだろう。
たとえば、多くのエグゼクティブ・チームを支援してきたなかで、戦略と執行において、こうしたプロセスがいかに重要かを理解しているエグゼクティブはほんのわずかしかいないと私は気づいた。そこで、この視点を持ち合わせているメンバーに呼びかけて、「大切な事柄が十分に考え抜かれていないとき、または意見の一致が表面的でしかないときには、皆さんがチームに挑むことになります」と、期待を伝えることにしている。異なる視点が持つ独自の価値を説明することで、少数派が声を上げやすいように後押しするのだ。
建設的な対立を常態化して後押しするための第3のアプローチは、意見の衝突に関する基本ルールを設定することだ。すなわち、建設的な対立(信頼の向上に貢献すると同時に意思決定を改善する対立)に貢献する言動とは何か、そうした対立を損なう言動とは何かを定義するようチームに求めるのだ。チームで受け入れることができる言動とできない言動を皆が明確にイメージできるよう、できるだけ幅広い分野について考えるといい。
よい対立を生む言動を明確にすることに加えて、より頻繁に、あるいはより効果的に対立できるようなプロセスや役割を明らかにするのもいい。エドワード・デボノの「6つの帽子思考法」を採用して成功しているチームもある。この思考法では、チームメンバーそれぞれに特定の視点(たとえば、白い帽子は論理的で事実に基づく視点、黒い帽子は慎重で保守的、緑の帽子は創造的かつ挑発的な視点)を与えることで、目下の問題に新たな光を当てる。あるいは、異なる見解を引き出す責任を、輪番制の議長や議題の提案者に割り当てているチームもある。ここで重要なポイントは、採用しようとするプロセスと、そこから何を期待しているかを明確にすることだ。
期待をより明確にすることで効果を発揮するのが、「悪魔の代弁者」(ディベートなどで多数派に対してあえて反論をする人)の役割だ。ただし、これを正しく活用しているチームはほとんどない。大抵の人はこの役割を、不人気な、または不快なことを言うこととしか捉えていない。「悪魔の代弁者」の真の役割は、証拠の信ぴょう性に疑問を投げかけることであり、発生した事象について別の説明を提示することだ(ちなみに、この用語の本来の意味は、教皇に任命されて、ローマカトリックの列聖の審議の過程で聖人たる証拠に反論する役割を担う人を意味した)。
「悪魔の代弁者」の役割を明確にすることで、意思決定のうえで採用している証拠の質と妥当性に揺さぶりをかけることが正当化される。真の「悪魔の代弁者」は実に役立つものなのだ。
上記の3つの手法を利用して、対立に関するメンバーたちの考え方を変えた後で、さらに踏み込む必要がある。異議を申し立て、異論を唱え、議論することに許可を与えるだけでは不十分なのだ。
結局のところ、したくないことをしてよいと許可を与えても、その行為が遂行される保証にはならない。チームの中に建設的な対立を創出することでより優れたアイデアを生み出したいと考えるならば、一歩踏み込んで、建設的な対立を義務付ける必要がある。上記3つの手法を利用することは、よいスタートになるだろう。
HBR.ORG原文:If Your Team Agrees on Everything, Working Together Is Pointless, January 31, 2017
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リアン・デイビー(Liane Davey)
チームマネジメントの向上を支援する3COzeの共同創設者。著書にYou First: Inspire Your Team to Grow Up, Get Along, and Get Stuff Done、共著書にLeadership Solutions: The Pathway to Bridge the Leadership Gapがある。@LianeDaveyでツイートを公開している。