ブレインストーミングの幻想

 筆者の一人が先日、学術界のある重要ポストの候補者を選定する委員会の委員長を務めた。選考委員会は教職員と学生の多様なメンバーで構成され、活動はオンライン上で行われた。

 だが、従来のブレインストーミングの手法ではうまくいかないことが、すぐに明らかになった。投票権を持たないメンバーが、自己検閲で発言を控えてしまうケースが少なくなかったためだ。

 この問題を乗り越えるために、委員会は決定を下す会議に先立ち、プロセス会議を何度も実施することにした。そして、プロセス会議では多様な見解(たとえば学生の意見)を認め合うという約束や、決定会議における「ゲームのルール」が定められた。こうした作業によって選考に要する時間は長くなったが、プロセスへの信用が高まり、学術界から信頼される採用結果につながった。

 理想的なブレインストーミングの状況について尋ねると、最も多いのは「皆で集まり、エネルギッシュで楽しい雰囲気の中、多くのアイデアが飛び交う」という返答だ。つまり大半のチームは、最高のアイデアはグループワークから生まれると考えている。しかし意外なことに、それは正しくない。

 グループでのブレインストーミングが生産的に感じられるのは、そこで生まれるアイデアの数ではなく、社会的効果のおかげだ。ブレインストーミングを通して味わう社会的つながりによって幸福感が高まり、それを生産性と混同してしまうのだ。

 実際には、グループで行う従来型のブレインストーミングよりも、個々のメンバーが個別に熟考したうえでアイデアを共有する名目上のブレインストーミングのほうが、一貫して高い成果を挙げている。多様なメンバーが集まるチームの場合は特に、この傾向が顕著だ。イェール大学の研究によれば、各自が考えたアイデアを集約する場合(名目上のグループ)のほうが、初めからグループワークを行う場合よりも、出されるアイデアの数が2倍多かったという。

 グループによるブレインストーミングでアイデアの創出が制限されやすい理由として、発案の阻止(アイデアを口に出す機会がなかった場合)、評価への不安(批判的に評されるという恐怖心)、心理的安全性の欠如(凝り固まった権力構造)、社会的手抜き(集団の影に隠れて相応の貢献をしない)が挙げられる。

 創造的な発想をうながすためには、リーダーはシンプルなツールを使って、グループ全体に公開する前に個人のアイデアを集める必要がある。グループでの議論は非同期で行い、各メンバーが互いの案を見て、それを改善しながら新たな案をつくり出す。リモートで行う場合は、チームの一体感を醸成し、信頼関係を構築する他の方法を模索すべきだ。

 創造性とイノベーションが競争優位に貢献するという点で、ビジネスリーダーたちの見解は一致している。イノベーション重視の文化を持つ企業は3倍の収益を上げているのだ。

 創造性を高める新たな取り組みを模索するリーダーは、3つの幻想を意識的に回避する必要がある。そのためには、明確かつ一貫した政治的コミットメント、インクルーシブなリーダーシップスタイル、考え抜かれた組織構造、そして使途を明示した予算が不可欠だ。

 創造性を高めるプログラムは喫緊の必須項目だ。コンセプチュアル・エコノミーにおいては、それが従業員の成長とエンゲージメントにつながるカギとなる。


"3 Common Fallacies About Creativity," HBR.org, November 24, 2021.