「3つのDによる変革プラン」で、みずからを変革する

――企業が変革のスピードアップを求められる中で、PwCコンサルティングも自社の大きな変革に踏み出したそうですね。

 コロナ禍がもたらしたパラダイムシフトにより、私たちのクライアントは変革のスピードを格段に上げることを求められており、PwCコンサルティングも価値提供をいっそう加速していく必要があります。

 世の中の変化のスピードがいまほど速くなかった時代は、DX(デジタルトランスフォーメーション)に5年、10年かかることもままあったのですが、いまはそんなに時間をかけていると、企業の存続自体が危ぶまれます。1〜2年といった短期間で変革を遂行しなくてはならない環境にあり、クライアントの意向に合わせながら、アジャイルかつシームレスに支援していくことが、私たちにとって重要なミッションになっています。

安井正樹
MASAKI YASUI
PwCコンサルティング合同会社
常務執行役 パートナー
大手コンサルティングファームを経て、2014年プライスウォーターハウスクーパース入社。デジタルトランスフォーメーション(DX)の専門家として、製造業を中心とした幅広い業種に対しサービスを提供。デジタルを活用したオペレーションの効率化、ITのモダナイゼーションを得意とする。近年はデジタルを活用した新規事業開発を多く手がけ、AI/IoTデジタル化構想、スマートシティ構想、宇宙ビジネスなどの戦略立案から実行支援までを一貫して支援している。岡山市Socirety5.0戦略アドバイザー、公益財団法人PwC財団の代表理事も務めており、官、民、ソーシャルセクターをつなげ、社会課題の解決にも従事。

 そこで、PwCコンサルティングは大きな変革に踏み出しました。事業の再構築、新規事業開発、組織改編、次世代マネジメントへの継承、人材育成などを中心に1年にわたって議論を行った結果、策定したのが「3つのDによる変革プラン」です。

 1つ目のDは、Dimension(ディメンション)で、クライアントのビジネスとそれに対するPwCコンサルティングの価値提供のあり方を多面的に見直し、バリューに直結するサービスを提供していこうというものです。

 コンサルティングファームは業界や専門性の軸で担当領域が分かれているケースが多いのですが、企業の経営アジェンダが脱炭素化や地方創生など社会課題の解決とより密接につながる中で、そうした枠組みでは、クライアントの複合的なニーズに対応できなくなっています。縦軸でも横軸でもない、「斜め上から物事を見る」というのが、ディメンションの意図するところです。

 そのために社内にシンクタンクのような機能を設け、クライアントの潜在的な課題を定義し、その解決を支援することも計画しています。

 2つ目のDはDesign(デザイン)で、クライアントの変革を成功に導く方程式をデザインするということです。たとえば、新規ビジネスを開発する際には、単にプランを作成するだけではなく、マネタイズや事業の持続可能性もしっかりと見据えたうえで、PwC Japanグループのサービスラインをまたぐホリスティック(全体論的)なアプローチと、さまざまなプレーヤーを巻き込んだエコシステムの構築によって、実装のスピードと成功確率を高めていきます。

 クライアントがいかに収益を生み、サステナブルな経営をDesignできるかという観点から、当社もリスクの一部をシェアするなど、サービスのプライシングや提供スタイルも柔軟化・多様化させていく必要があります。

 そして、3つ目のDは、Disruption(ディスラプション)です。デジタルを活用して、既存の概念や価値観を一新させるようなサービスを提供していきます。PwCコンサルティングが有する「エクスペリエンスセンター」や「Technology Laboratory」は、クライアントがメタバースを体感したり、新規ビジネスを創出したりするためのアイディエーションの場となっています。

 さらに、デジタルプロダクトを開発するケーパビリティを備え、すでにサービス提供も始めています。その一つである「IBA」(Intelligent Business Analytics)は、潜在アライアンス企業を選定する際、世の中にある特許情報を人工知能(AI)で解析して、どの企業が持つ特許をどう活用すれば、新規ビジネスを効率的につくることができるかを導き出すものです。

 クライアントに「デジタルを使って変わりましょう」と言う前に、私たち自身がデジタルをフル活用し、アジャイルな方法論でディスラプティブなサービスを提供していく。そうすることで、クライアントの変革プランの実装、改良のサイクルをよりスピードアップしていきます。