「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」(DHBR)は、法人向けデジタルサービスの展開を強化しています。おかげさまで順調に伸びていますが、初めてお使いになる方から「どのように使ってよいのかがわからない」という声が寄せられています。また、このほどサイトデザインを一新しました。そこで、DHBRの法人向けデジタルサービスの効果的な使い方と、おすすめのコンテンツについてご紹介いたします(2023年7月7日、記事内容を一部更新しました)。

個人のキャリアアップや
チームの成長につながる 

「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー」(DHBR)では、法人向けのデジタルサービスの展開を強化しています。実際、次のような課題を抱えている皆様のご利用が増えています。

・グローバルなビジネストレンドをつかみたい
・最新のフレームワークや経営理論について知りたい
・社内会議やセミナー用のネタを探したい
・継続した学びの教材としてキャリアに生かしたい
・組織やチームを動かす説得材料を探したい
・戦略的な思考力の高い人材を育てたい

 しかしながら、初めてDHBRに触れる方もおり、「オンラインサービスをどのように使ってよいのかがわからない」という声が寄せられています。また、このほどデザインをリニューアルし、サイトの使い方も変わりました。

 そこで今回は、デジタルサービスの基本的な使い方と、効果的な記事の選び方や読み方についてお伝えします。

まずは毎号の特集で
世界のトレンドをつかむ

 何といってもご覧いただきたいのは、雑誌に掲載した最新の特集論文です。

 DHBRでは毎号、旬な特集をお届けしています。欧米企業と日本企業の課題感が必ずしも一致するわけではないため、米HBRの特集や論文をもとにしながら、DHBR編集部が日本版の特集を企画しています。その際、日本オリジナルコンテンツを用意して、特集に深みをもたせています。

 たとえば、2022年5月号の「リーダーシップの転換点」では、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラッドン氏らの論文に加えて、資生堂の魚谷雅彦社長のインタビューを掲載しました。

 こうした日本人経営者らのインタビュー記事や日本人著者による寄稿は、特集の趣旨をいち早く理解できるとあって、人気の高いコンテンツです。

 オンラインでは、サイト上部(モバイルでは左上のメニュー一覧)の「特集」を開くことで、最新の特集を見つけることができます。あるいは、「雑誌」を開き、最新号の「目次・詳細」をクリックしていただくことでも確認できます。

 雑誌コンテンツは、電子ブック形式で雑誌のレイアウトですべて読むことはできません。ですが、各論文は雑誌版のレイアウト(PDF形式)でも読むことができます。各記事のそばにある「PDF」のアイコンを押すことで、PDFファイルのダウンロードができます(ただし「論文セレクション」利用者、および法人プラン加入者のみです)。

 長い論文を読む時間がないという場合は「Idea Watch」というシリーズもおすすめです。最新の研究をもとにした短い記事ながら、あっと驚く意外な内容が掲載されています。研究者の中にはこのコーナーで「ネタ探しをしている」という方もいるほどです。

 そのほか、2022年秋からは、HBR100周年の記念連載をスタートしており、HBRやハーバード・ビジネス・スクール(HBS)にゆかりのある方々へ、「これからの経営者の条件」をテーマにDHBR編集部がインタビューしています。

 DHBRの雑誌は毎月10日前後に発売しています。現在、雑誌掲載の論文については、発売日前日の夕方までに配信しています。もし忘れてしまっても大丈夫です。発売日にはメールマガジンでお知らせをしています。

 このように月1回でも構いませんので、特集テーマと気になる論文をぜひご覧いただけると幸いです。

会員限定コンテンツが利用可能
『世界標準の経営理論』の解説も

 次にご覧いただきたいのは、HBRのオンライン版であるHBR.orgに掲載された翻訳論文(記事)や動画などのオンライン向けコンテンツです。

 現在、HBR.orgに掲載された論文の中から厳選して翻訳しています。オンライン向けの日本版オリジナル記事も含めて、現在は平日に1日2本程度のペースで配信しています。

 オンライン向けコンテンツは、雑誌掲載の論文よりは短く、時事性に富み、最新のトレンドを把握しやすいのが特徴です。サイト上部(モバイル左上のメニュー)から「新着」をクリックいただくか、あるいは検索ページの「フォーマット デジタル記事」から探すことができます。

 分野を絞りたい場合は「トピックス」の一覧から探すこともできます。たとえば「イノベーション」や「データ経営」など、人気分野を新たな知見を得ることもできます。

 最近は、動画コンテンツも数多く配信しており、サイト上においてアクセスしやすいように「動画」のタブを設けました。

 たとえば、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏へのインタビューの字幕付き動画や、「イノベーションのジレンマ」や「デザイン思考」などを解説した「The Explainer」シリーズです。

 また、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授による『世界標準の経営理論』の解説動画もその一つです。12万部を突破した人気書籍に掲載された経営理論を1章ずつ入山教授みずからが語る内容で、とても人気の高いコンテンツです。

 DHBRで行ったセミナーイベントも閲覧できます。「ハイブリッドワーク」について語ったリンダ・グラットン教授へのインタビュー動画や、「プロジェクトマネジメント」をテーマにしたリクルートの北村吉弘社長と山口周さんの対談動画などを掲載しています。

 もし、その時に読む時間がとれなかったら、記事の付近にある「保存する」あるいは「SAVE」のアイコンをクリックしてみてください。「保存されたコンテンツ」に格納されて、あとで簡単にアクセスできるようになります(ただし、ブラウザーのCookieベースで保存しているため、異なるブラウザー間をまたぐことができません)。

時代を超える名著を掲載
まずはこの20論文から

 さて、DHBRのコンテンツに慣れた頃に、ご活用いただきたいのがアーカイブ(論文セレクション)です。

 法人向けプランではPDFダウンロード機能が使えるため、計3000本以上の過去のコンテンツを閲覧できます。アーカイブの魅力は、いまなお価値のある論文にいつでもアクセスできることにあります。

 とはいっても、「どのような論文から読み始めたらよいのかわからない」という方も数多くいます。そこでいくつかの切り口をご紹介いたします。

 まず、定番の戦略論に関わる名著シリーズです。

 ファイブフォース分析を広め、競争戦略の大家であるマイケル・ポーターは、HBRの常連の寄稿者です。ポーターの「競争の戦略」「戦略の本質」は、いまもなお多くの方に読み継がれています。

 さらに、もう一人挙げるとすればクレイトン・クリステンセンです。代表的な論文に「イノベーションのジレンマ」があります。これは、シェアトップの企業が顧客の要望に応え続けることでイノベーションが遅れ、市場シェアを奪われてしまう原理を示したもんです。また、「Jobs to Be Done:顧客のニーズを見極めよ」も大きな影響を与えています。

 ほかにも、1980年代の日本企業の強さを組織の内部要因に見出したC. K. プラハラッドとゲイリー・ハメルによる「ストラテジック・インテント」「コア・コンピタンス経営」もHBRの代表的な論文です。

 競争の激化した市場を「レッド・オーシャン」と名付けてそこから脱する戦略を提唱したW. チャン・キムらの 「ブルー・オーシャン戦略」も、戦略論において欠かせない論文です。

 日本人でHBR誌上に寄稿した一人に、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏がいます。暗黙知と形式知から知識創造の原理を解いた名著「ナレッジ・クリエイティング・カンパニー」もご覧いただけます。また、ハーバード・ビジネス・スクール教授(シニア・フェロー)である竹内弘高氏との共著である「賢慮のリーダー」も必読です。

 もし、部下を持ったばかりであれば、リーダーシップ論の大家であるジョン・コッターの「リーダーシップとマネジメントの違い」はぜひご覧いただきたい内容です。

 ウィリアム・オンケン Jr.らによる「マネジャーが時間管理の主導権を取り戻す法」は、上司が引き受けてしまいがちな仕事をサルに例え、ユーモアたっぷりにマネジャーの仕事の本質を描いています。

 一方、マーケティング担当者であれば、いち早く押さえておきたい論文もHBRで発表されています。たとえば、IDEO創業者のティム・ブラウンによる2008年の「IDEO:デザイン・シンキング」は、デザイン思考ブームの火付け役となりました。

 また、2013年に出たトーマス・ダベンポートらの「データ・サイエンティストほど素敵な仕事はない」は、データ・サイエンティストという職業を世に知らしめた論文です。現在はAI・アナリティクスの分野への寄稿も数多くあります。

 人事関連の論文も豊富です。いま、注目を集めている職場の心理的安全性について、いち早く説いたのがエイミー・エドモンドソンで、彼女の 「『恐怖』は学習意欲を阻害する」には、いまも多くのヒントが詰まっています。

 近年では、マーカス・バッキンガムらの「チームの力が従業員エンゲージメントを高める」がおすすめです。組織図に現れないチームの力の重要性を説き、従業員エンゲージメント向上のヒントを提供してくれます。

 近年のトレンドとして、企業の社会的な存在意義(パーパス)をめぐる議論も盛んです。クリストファー・バートレットらは1994年に 「戦略を超えて──パーパスの時代」で、パーパスの重要性を述べていました。

 また、ポーターは、社会問題の解決に取り組むことで社会的価値を創造し、その結果として経済的価値が創造されるということを「共通価値の戦略」として提唱し、CSV(Creating Shared Value)という言葉を浸透させました。

 当時、一世を風靡したジェームズ C. コリンズらの「ビジョナリー・カンパニーへの道」も改めて読み返したい論文です。

 そのほか、HBRでは自己管理のテーマも多く、リーダーがみずからを律することに役に立つ論文も多数あります。

 人生の戦略論を説いたクリステンセンの「プロフェッショナル人生論」や、自己の強みに焦点をあてるべきだというピーター・ドラッカーの「自己探求の時代」は何度読んでも、数多くの示唆を与えてくれることでしょう。

 ここまで紹介した論文は、アーカイブ内に収録してあるほんの一部にすぎません。DHBRでは、識者に「おすすめの論文を紹介してください」と尋ねるコーナーや、HBRの注目の著者について記事化した連載記事もあります。

 「HBR入門」にもまとめていますし、特に名著は、HBR Classicsシリーズとしても連載しています。ぜひアクセスしてみてください。

不確実な時代において
確かな「思考の軸」を身につける

 ここまで紹介した論文は、ビジネス現場で起きている数々の実務課題を必ずしも解決するわけではありません。ともすれば抽象的に感じるかもしれません。

 ですが、そこで紹介されたフレームワークや理論をあてはめて、現場の課題をとらえ直していただきたいのです。こうした考え方の枠組みを、私たちは「思考の軸」と呼んでいます。

 不確実性の高い時代、個別の解決法やノウハウをいくら知っていても、瞬く間に陳腐化してしまいます。思考の軸があるからこそ、現場で起きている個別の課題や個々の悩みをある枠組みをあてはめて考えることができます。

 この思考の軸を磨くことで、物事を俯瞰してとらえ、あらゆる現象に対応できるようになり、ビジネスリーダーとして大きな成果を上げられると信じています。

 DHBR編集部としても、単に雑誌をつくるのではなく、オンラインサイトの運営やイベント開催、メールマガジン配信、書籍の制作などを通じて、その思考の軸を磨くためのお手伝いをしています。

 たとえば、毎号の雑誌テーマを深めたり、経営理論について議論したりするイベントを行っています。また、メールマガジンを配信し、DHBR編集部メンバーの視点を提供しています。

 ほかにも、雑誌に掲載された人気論文をより深めようと、書籍化につなげた事例も数多くあります。最近では、入山教授の『世界標準の経営理論』や河本薫・滋賀大学データサイエンス学部教授の『データドリブン思考』がそうです。

 また、編集部では、HBRグループの所属するハーバード・ビジネス・スクール・パブリッシング刊行の翻訳書やHBR著者の翻訳書も数多く手掛けています。それらは「書籍」一覧からご覧いただけます。

 DHBRでは、「世の中を変えるリーダーに、アイデアと思考の軸を提供し、よりよい未来をつくる」というパーパスを掲げています。

 会社や社会を変えようと日々奮闘されているリーダーの皆様とさまざまな接点を持ち、その活動に貢献できるよう、今後もサービスの向上に励んでまいります。

 引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

(編集長 小島健志)

【内容更新】
デザインリニューアルおよびサービス変更に伴い、記事内容を一部更新しました。
(2023年7月7日17:00 DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー編集部)