境界に囚われないマネジャーの育成

 新たな関係を構築し実行する際に、責任者となるマネジャーは、不慣れなビジネス手法にオープンな姿勢で臨む必要がある。従来とは異なるタイプの機会の価値を見極め、最適なパートナーを探し、潜在的なリスクを最小限に抑えながら、得られる価値を最大化するような契約をまとめる力が求められる。

 つまり、サプライチェーンのデジタル化を進めている、あるいは検討している企業は、新たな職務とそれを支えるシステムの構築を進めるべきだ。ここでは、そうした新たなアプローチの例を紹介しよう。

 コラボレーションのチャンスを見極める:マネジャーは新たな関係を活かせる方法を探すよう奨励すべきだ。たとえば、デジタル技術に強い企業は、パートナーや顧客と連携して常に新たなテクノロジーを試し、プロトタイプを開発する。ウォルマートは顧客に新たなショッピング体験を提供すべく、ティックトックと連携してライブストリーミング技術を使った実験を進めている。

 コラボレーションの利点を反映させたKPIを作成する:デジタル化がもたらす機会を取りこぼさないよう、マネジャーは使用する重要業績評価指標(KPI)の範囲を拡大する必要があるかもしれない。たとえば、ウォルマートのゴーローカルプラットフォームでは、定時配送といった従来型の指標だけでなく、このプラットフォームに加わる前には存在しなかった一括配送による利益も測定している。こうした測定データが、小さくとも初期段階における成功「クイックウィン」の証左となり、デジタルイニシアティブによって得られる利益のスケーラビリティを促進していく。

 状況の変化に対応できる契約を結ぶ:デジタル化と、それが生み出すユーザーのコミュニティによって、企業は新たなビジネスの需要に応じて合意条件を迅速に変更できる契約システムを開発できるようになる。

 たとえば、世界的な受託製造企業のフレックスが、世界各地の製造業務を可視化するために構築したクラウドベースのプラットフォーム「フレックス・パルス」は、デジタル契約システムにも対応している。このシステムは、契約書をデジタルで保存・管理し、フレックスとサプライヤー、顧客が関与する業務をリアルタイムでモニタリングしている。インセンティブなどの契約条件は、市場の変化に応じて迅速に書き換えられる。

 また、このシステムは人工知能(AI)アルゴリズムを使ってサプライヤーのパフォーマンスを追跡しており、共同業務を効率化する機会を発見できる。そして、そのような機会を契約条件の改定にすぐに反映させられる。

 境界に縛られない発想ができる人は、DXが実現する新時代に不可欠な変革の担い手だ。彼らがいなければ、企業が新たな世界で勝ち残っていくのは難しいだろう。


"Digital Transformation Is Changing Supply Chain Relationships," HBR.org, July 07, 2022.