●解決策1:キャリアに関する会話は昇進ではなく向上に焦点を当てる。

 最近は、キャリアに関する会話は急かされたり、質が低かったり、日々の業務を優先して省略されたりすることも多い。しかし、ガートナーによれば、キャリアに関する会話は人材を維持するために「重要な瞬間」の一つである。質の高い会話の目的は、個人がみずからのキャリアの方向性に好奇心を持つことを認めることと、実践的なサポートを提供することの2点である。

 強みを見つける

 自分の強みを知ることは難しく、その強みを組織内のさまざまな役割や部署でどのように活かせるかを考えることは、さらに難しい。キャリアに関する会話は、マネジャーが強みにもとづき「あなたは~で力を発揮する」というようなフィードバックを従業員と共有するだけでなく、その強みがほかのチームでどのように役立つかを議論する機会になる。そして、従業員が自分の成果だけでなく、仕事の進め方にも価値を見出しやすくする。

 たとえば、優秀な問題解決者やクリエイティブな協力者の恩恵を受けないチームはほとんどないだろう。自分の強みを認識するだけでなく、その強みがどのような場面で活かせるかを理解することは、組織内でキャリアの可能性を探ろうという自信を高める第一歩になる。

 つながりをつくる

 マネジャーは、従業員がキャリアについて考えるきっかけをつくるうえで重要な役割を担う。このような会話は、求人への応募に関するものではなく、ほかの人の世界を覗くためのものだ。

 人によっては、特に年上の人に非公式な話を持ちかけるのは気が重いだろう。マネジャーは基本的に、組織全体に幅広い人間関係を持ち、人脈を築いたり、新しい人を直接紹介したりするのに適した立場にいる。マネジャーが自分の直属のチーム以外で、チームメンバーの機会を探ることが組織全体で奨励されれば、従業員が将来の可能性をほかの場所に求めると、業績評価にマイナスの影響を与えるのではないかという懸念が軽減される。

マネジャーがキャリアについて話す時の3つの質問
自分の強みを発見し、いまいる部署ではないほかの場所でどのように活かせるかを考えるために、メンバーに以下のような質問をしてみよう。
1. 現在の仕事について、最も高いモチベーションは何か。
2. あなたが評価されたい才能は何か。
3. どのようなキャリアの可能性についてもっと知りたいか。

 ●解決策2:キャリアの実験を行いやすくする

 社内で新しい役割に応募することは、形式的で時間のかかるプロセスに感じられるかもしれない。そのためマネジャーが協力して、組織全体でキャリアの実験を行う方法がある。この実験では、従業員が安全で楽しいと感じられる方法で、新しい経験や機会を試すことを奨励するのだ。実験によって成果に差が出ることは避けられない。しかし、実験的な取り組みを行うこと自体が「スクイグルとステイ」すなわち、組織内でさまざまなキャリアを経験しながら働き続けることを支援するために、会社が投資しているという意思表示になる。

 才能のレンタル

 新しいチームや部署への異動は、従業員にとってさまざまな不安があり、未知数でもある。このリスクを減らすために、いきなり深みに飛び込むのではなく、足先を少しずつ水につけるように人材を共有する方法を考える。

 たとえば、2人の社員が半年間、週1日、仕事を交換する。特定のプロジェクトのために一定期間、一時的に借りる人材「才能のレンタル」の役割を決める。あるいは「スクイグリー・サファリ」として、本業で2週間の休暇を取り、組織のさまざまな部分について学ぶ、といった簡単なものでもいい。こうした実験では誰もが得をする。従業員はサイロから抜け出してネットワークを広げ、マネジャーはより幅広い人材から利益を得られるのだ。

 スキル・マーケットプレイス

 多くの組織が、スキルを共有する仕組みを見直している。肩書きではなく才能で認識される人は、肩書きではなく才能で自分を語る。こうした才能がプールされている「スキル・マーケットプレイス」では、マネジャーは必要な専門知識をもとに自分のプロジェクトの特徴を整理して、組織内で利用できる経験と照らし合わせて人材を選ぶ。

 このアプローチで、企業は正確かつ前向きにスキルギャップを評価できる。1人の人間がすべての分野で優れた能力を発揮することを期待するのではなく、役割全体を一連のスキルに分解して、複数の人間で分担できるのだ。

キャリアの実験:3つの例

 自分のスキルや強みを組織内のほかのチームと共有しやすくするために、以下の実験を試してみよう。

1. スクイグリー・サファリ:本業で2週間の「休暇」を取り、組織のほかの部分を探検する。
2. 才能のレンタル:短期的な役割を設け、ほかの部署から借りた優秀な人材にチームを手助けしてもらう。
3. スキル・マーケットプレイス:スキル要件にもとづいてプロジェクトの社内公募を行い、従業員とプロジェクトをマッチングさせる。