●ネットワークを開拓し、自分自身の選択肢をつくる
新しい分野に参入すると、その分野でのネットワークがまだ十分構築されていない可能性が高く、3つの理由から、状況の改善に注力しなければならない。
まず、新たなキャリアをスタートさせたばかりの時期は、自分が実際にどのような領域に適しているのかが明確ではないかもしれない。たとえば、ソーシャルメディアに特化した仕事でマーケティングの世界に入ったものの、後になって「自分は長文のコンテンツのほうが好きだ」と気づいたりすることがある。人脈を広げることで、自分でも気づかなかった新しい一面を発見し、最終的に自分の得意分野を見つけることができるだろう。
次に、「社内外のネットワークを意識的に開拓しなくてはならない」と留意することが重要だ。たとえば、実際に入社してみると労働環境がよくなかったり、業績が悪化していたりしていて、その会社への入社が、最適な選択ではなかったことに気づいていなかったという場合もあるだろう。業界外の人は、業界内の人が避けている会社に入りやすいからだ。最初の会社が自分に合わなければ、すぐにでも転職したくなるため、ネットワークは広く構築すべきである。
最後に、仕事の多くは「ウィークタイズ」(弱い紐帯)と呼ばれる、弱いつながりを通じて見つかる。特に、その分野で長く働こうとしているのであれば、早い段階から人間関係を構築することは大きな意味を持つ。なぜなら、いまから10年後、あなたに求人情報を送ってくれるのは、その人たちだからだ。
●新たなチャンスを見極める
キャリアパスを構築する最良の方法の一つは、自分で自分をつくり上げることだ。筆者は、拙著Stand Out(未訳)の中で、マイク・ライドンの例を紹介している。若き都市プランナーである彼は、グレートリセッションによる経済的混乱の中、自分の専門分野である「タクティカル・アーバニズム」(編注:短期的な小さなアクションによって都市を長期的に大きく変えようとする、市民主導の都市改善運動や方法論)の専門知識をもとに新たな一歩を踏み出し、みずからの会社の立ち上げに成功した人物だ。
新しいトレンドだったため、他社はまだ、この分野で市場を押さえていなかった。ライドンはケーススタディを幅広く集め、それを広く共有することで、業界大手と直接対抗することなく、すぐさま専門家として認められるようになった。重要性が増している領域で「頼りになる人」になることができれば、そこでキャリアパスを築けることが少なくない。
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たしかに、あらかじめ決められたキャリアパスを歩むことができれば、人生はずっとシンプルだろう。しかし、最近では一般に、そのような選択肢はない。自分自身でキャリアパスを明確にしたり、創出したり、積極的に追求していかなければならないのだ。
そう聞くと、やらなくてはならない仕事がもう一つ増えたような負担を感じるかもしれない。だが、自分の興味や才能を、よりよく反映させたキャリアパスを構築するチャンスでもある。本稿で紹介した4つの戦略を実行することで、あなた自身が望む長期的なキャリアを手に入れる可能性がずっと高まるだろう。
"How to Build a Career in a New Industry," HBR.org, September 07, 2022.