ケア:理解と信頼を築く

 今日の従業員はリーダーが自分のことを気にかけてくれていると確信できるまで、全身全霊で仕事に打ち込まない。彼らは仕事に全力を傾ける前に、リーダーとの間に個人的なつながりを求める。そのためリーダーは、かつてはタブーとされていた水準のアクセスのしやすさとオープンさ、そして深みを提供する必要に迫られる。

 組織や教室での筆者らの経験から言えば、ベビーブーマー世代のリーダーの多くは従業員に心を開くことに消極的で、主に直属の部下と接することを好む。だが、今日の従業員はリーダーに対して、つながりと信頼性(オーセンティシティ)の両面を求めており、まがいものを即座に見抜いて、そのような人物とは一緒に働きたくないと考える。つまり、コーチング型リーダーは、チームのパフォーマンスだけでなく、個人のキャリアも含めて、チームのことを心から気に掛けていることを、最初から示す必要があるのだ。

 ホスピタリティ・旅行業界のカールソン・カンパニーズのマリリン・カールソン・ネルソンCEOは、自分が従業員のことをどれほど気にかけているかをみずから示すことで、企業文化を転換させたと語っている。「従業員の満足が顧客の満足を生み出します。サービス業界では、顧客は自分が本当に大切に思われているかをすぐに察知するのです」

編成:適材適所に配置する

 コーチング型リーダーの2つ目の役割は、チームメンバーの長所と短所、モチベーションや望みを知って理解することである。そして、その情報を活用してチームを編成し、各自の強みとモチベーションが交わる「スイートスポット」で活躍できるようにすることだ。適材適所で仕事ができれば、人は刺激と活力、満足感、そして情熱を持ち、仕事を成功に導く。

 適材適所の組織文化を創造するには、リーダーがオフィスや会議室に閉じこもることなく、チームメンバーと直接関わることが必要だ。それにも増して重要なのは、コーチング型リーダーが市場に出ること、つまり、部下が顧客と接する様子を観察し、チームメンバーの強みと顧客のニーズや要望との接点を理解することである。

 このような直接的な対話は重要だが、従業員アンケートによるリアルタイムのデータ収集と組み合わせるとさらに効果が高まる。アンケートの結果は、リーダーが日々の交流で得た情報を検証するのに役立つ。また、全員が自身の強みを発揮でき、権限と組織力を有するチームをつくるための意思決定にも役立つ。