支援: 問題を解決して成功を祝う
指揮・命令型のマネジメントでは、経営幹部が戦略や構造、プロセスを構築した上で、その実行を部下に委ねてきた。その後、結果を検証し、数値的な成果によって部下を評価する。
だが現在では、そのような人任せのアプローチは通用しない。リーダーは裁判官ではなく、同僚なのだ。
コーチング型リーダーは職場で従業員と個人的に関わり、彼らが選択肢について考え、困難な課題を解決するための支援をする。そして、うまくいった時は表彰式や営業会議に出席して、彼らの功績を称える。
ロイ・バジェロスはメルクのCEO当時、定期的に従業員食堂で食事を取り、仕事の内容や課題について従業員から話を聞いたという。さらに後日、その人たちを呼び出して、問題解決に向けたアイデアを提供することも少なくなかった。
筆者らの進化
筆者らもすべての疑問を解き明かした専門家としてではなく、同じ旅人として本稿を執筆している。我々2人はどちらも、みずからのリーダーシップを従来型のマネジメント手法からコーチングへと進化させてきた。
ビルはメドトロニックのCEOとして、工場やラボ、オフィス、病院などで従業員と多くの時間をともに過ごした。そうすることで、みずからが従業員に対して深い思いやりを抱くと同時に、同社のミッションに対する従業員のコミットメントに敬意の念を表してきた。だが、従業員を適材適所に配置し、会社のパーパスや価値観に合致させるためには大規模な組織改革が必要だった。従業員がより高い水準のパフォーマンスに挑み、彼らに必要な支援を提供した結果、事業は大成功を収めた。
ミレニアル世代のザックは、24歳でスリーシップスを設立した3年後、仲間からの360度評価で厳しい言葉を突きつけられた。仕事を手早くこなせる自分の能力を重視するあまり、他者に対して実現不可能な基準を要求している、というのだ。この指摘を受けて、ザックは成功の物差しを個人の成果からチームの成果へと切り替えた。
それから10年、彼はいまもチームから頻繁にフィードバックを受けながら、この旅を続けている。物差しを切り替えたおかげで、ビジネスの成長スピードは格段に向上した。
筆者らの経験は珍しい話ではない。MBAの学生からCEOまで、何百人ものリーダーと対話を重ねてきた結果、筆者らは重要なシフトが進行中だと確信している。
リーダーシップのモデルはよりよい方向に変わりつつある。そして、勝利の方程式は「よいコーチ」であることだ。
"Successful Leaders Are Great Coaches," HBR.org, October 06, 2022.