人は他人を模倣することで、みずからを再創造する。政治、経済、科学、文化、いずれも模倣の賜物といえる。現在、ITの発展はこうした人々の模倣をさらに強化・増幅させ、ブームやバブルがより短期間で引き起こされるようになった。その結果、市場の予測不能性と不安定性が増大している。しかし、模倣が起こるメカニズムとダイナミクスを理解することは、まさしく「市場の複雑性」を解き明かす手がかりであり、また「複雑系のマ…

高感度のアンテナをめぐらしたマーケターといえども、市場や消費者の変化に気づかなかったり、見過ごしたりする。アメリカにおける世帯所得分布の変化はその一例である。中間層と富裕層との間に「新富裕層」が出現し、いまや一大勢力になりつつある。しかし、自分のニーズと価格との距離に敏感な新富裕層には、新しいマーケティングが必要となる。本稿では「ポジショニング」「商品やサービス」「流通チャネル」の3つの側面から…

ブランド価値は企業ではなく、顧客が決める。また、ブランドは手段であり、目的ではない。しかし、この真意が理解されているとはとうていいえない。ブランドにこだわる余り、顧客リレーションシップや生涯価値をないがしろにしている企業が至るところで散見される。本稿では、カスタマー・エクイティを増大させるブランド・マネジメントを提示する。

新規顧客の獲得率と既存顧客の継続率――。いずれもマーケティングの成果を測る金科玉条だが、実は大きな問題を抱えている。なかでも情報やデータに存在する「偏り」は最大の障害となる。本稿では、顧客の獲得・維持および収益性に関する統合的回帰分析法、「ARPRO」を紹介する。

オフショアリングによって、アメリカのサービス業は次々に海外移転し、その結果、雇用も奪われるという記事を見かける。しかし本当に問題視すべきことは、本稿の筆者いわく「サービス業の競争力が失われることである」。サービス業は現在、製造業が体験してきた世界的な変化の渦中にある。すなわち、「グローバル化」「自動化」そして「工業化」である。このようなサービス革命にどのように対処すればよいのか、本稿ではその具体…

グローバル・ブランドには強大な力がある。それゆえ、同時に背負わなければならない責任がある。グローバルというメリットと責任を同時に管理してこそ、企業はその価値を最大限に引き出すことができる。筆者らは、グローバル・ブランドに関する消費者の認識について、まず41カ国1,500人に、次いで12カ国1,800人に調査し、グローバル・ブランディングに求められる特性を明らかにした。

数々の調査が示すとおり、経営者も株式市場も無形資産投資の価値を正確に把握していない。ブランドやITへの投資、社員教育はもとより、R＆D投資ですら、そうなのである。たいていの場合無形資産投資はコストとして処理される。しかし、収益を生み出す活動すべてが、無形資産投資を前提に成り立っており、このような会計処理は株価を歪めるだけでなく、誤った意思決定や資源配分を招く原因となっている。実際、過小評価や過大評価されている企業が多い。本稿は、無形資産の評価体系のあり方について、その基本フレームワークを提示する。

企業の体力や業績を長期的に左右するのは、カリスマ経営者や一握りのスター社員といった個人の力ではなく、その企業が身につけている「組織能力」である。しかし、ほとんどの企業がその体系的評価法を持っていない。本稿では、重要な11種類の組織能力を抽出し、個々にその評価ポイントについて解説する。厳密な定量評価はいらない。むしろ組織能力の重要性を組織的に認識する能度が求められている。

ITにしろ、何にしろ、リスク・マネジメントは何事も起こらないことが成功の証である。したがって、地味で目立たない経営課題ゆえトップ・マネジメントはついつい軽視しがちだ。しかし、ひとたび顕在化した時の影響は甚大である。大半の企業が、ITセキュリティの脇が甘い。継続的改善がいかに必要であり、一担当者の範囲に収まり切らない問題であるかを説く。

「産業の突然死」――これは局地現象ではなく、あらゆる産業にその可能性がある。この破壊的現象を回避するには、世界に散在する「デジタル感度の高い」8億人の消費者たちを怠りなく注視することが欠かせない。同時に、周辺領域に拡大したり、既存と新規をつなげたりといった「AND」の発想を捨て去り、「OR」の発想に転換することも必要だ。いわゆる「選択と集中」のレベルを超えて、事業の密度と深度を追求することである。