リスクマネジメント機能は企業の経営戦略と表裏一体に

 経営環境が断続的に変化する中で、企業はどのようにしてリスクに向き合うべきなのか。

「企業組織が本来持つべきリスクマネジメント機能として、経営戦略、経営基盤、双方が接合する領域、これら3つの観点が肝要」と小山氏は言う。経営戦略のカギとなる外部環境変化については、リスク要因とはなりえるが、リスク事象として一企業によってコントロールされるものではない。一方で、経営基盤の観点では法令遵守に加えて、企業の行動指針やバリューに基づくルールによって統制されるものであり、これらはコントロールされるべきものということだ。

「コンプライアンスやルールなどの『静的』なリスクへの統制は当然として、外部環境変化を予兆的に捉える『動的』な機能への進化の機運が高まっています。リスクの加速度を吟味して舵取りに反映することがパフォーマンスのクオリティを左右するでしょう」と小山氏は続ける。

 他方、企業におけるリスクマネジメントの実態についても指摘する。

「わが国の社会環境に伴う習慣を一因として、リスクが顕在化した後の事後対応のケースが多くあります。大半の企業でリスク対応は経営レベルから現場レベルまで暗黙知的に行われていますが、形式知的に仕組み化したとたんに学術的、教科書のような話でリアリティから離れてしまうケースが散見されます」。それはなぜか。「企業・組織の存在意義、目指すゴール、経営計画などとひもづけたそれぞれの組織レイヤーにとっての手触り感のある仕組みではなく、通常業務とは別ものとして捉えた活動になっているからではないでしょうか」

 優れたリスクマネジメント機能は、一企業が外向けに開示する情報やデータだけでは読み解けないことが多い。しかしながら、結果として企業戦略のクオリティや実現性と表裏一体となっていることは確かなようである。優れたリーダーたちは、緻密に先を読み、打ち手を備えている。いざとなった時に、先頭に立って組織を守り、あるべきポジションに導く。逆に言うとリーダーのリスクに対するセンスが劣っている組織は、目標を達成しがたいと考えられる。

「リーダーシップのクオリティを形成する一つの要素として、多種多様なリスクに対する感性、耐性が挙げられます。リスクマネジメントに関するコンサルティングサービスを提供するプロフェッショナル組織として、より良い社会の構築のために、レジリエンスを具備したリーダーを多く支援できればと考えています」と小山氏は語る。

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