現場主導で加速するAI活用と内製化の波
キックオフから2年目、プロジェクトは新たな局面を迎えた。基幹システム刷新に加え、「パッケージによる内製化」や「システム開発への生成AI活用」へとテーマが拡大したのだ。これは、クラウドやAIといった進化するテクノロジーを組み合わせ、仕事のやり方そのものを変革しようとするKDDIの強い意志の表れだった。
特筆すべき成果は、KDDI情報システム本部独自の生成AIサービス「RAISE」の開発である。現場には、仕様書の確認や、複雑なシステム変更時の影響範囲調査に膨大な時間を要するという課題があった。これを解決するため、若手社員たちが中心となり、クラウドとAIを駆使してRAISEを開発したのである。
「AIをよく使っていた社員は、『使う』から『創る』という、より尖った活動にシフトしました。AIをあまり使っていなかった層も、実際に業務プロセスにAIを組み込むことで行動変容が起きました。これは大きな成果でした」。増田氏がそう語るように、現場の熱量は確実に高まった。
熱量の高まりには、Ridgelinezが企画した「ライトニングトーク」も大きく貢献した。情報システム本部内のメンバーが自発的にAI活用事例やアイデアを共有するこの場には、延べ600人が参加。現場の相互刺激によって、組織全体に新しい技術への挑戦を称賛する文化が根づき始めた。Ridgelinezは、こうした現場の活動を組織的な形にまとめ上げ、ガバナンス整備や品質管理といった経営視点の課題とも結びつけることで、組織実装を支援した。
Ridgelinezが伴走するプロジェクトの開始から4年。KDDI情報システム本部は、従来のコストセンター的存在から、価値を生み出す「バリューセンター」へと脱皮を遂げつつある。
今後の展望について増田氏は「競争力の底上げ」を掲げる。「1つはRAISEのような仕組みをスケールさせ、社内外に通用するアセットにしていくこと。もう1つは内製化の深化です。コーディングや設計はAIが担っていく未来を見据え、人間は上流の要件定義や、AIのアウトプットを判断する役割にシフトしていく必要があります」
内製化を深化させるには、不足しているさまざまなリソースを補完する必要がある。目指すのは社外パートナーやベンチャー企業と連携し、価値を創出する「共創モデル」だ。「我々情報システム本部は今後、人材だけでなく、プロセスや仕組みを含めて他社に価値を提供できる存在を目指しています。Ridgelinezには、我々のアセットを活用した共創型ビジネスモデルの構築においても、伴走を期待しています」
水谷氏は、この共創モデルが持つ社会的意義を強調する。「KDDIの取り組みは、人を起点とした変革のリアルな実践事例です。この知見を共創モデルによってKDDIグループ全体、さらには外部の企業へと展開していくことで、日本の変革のCoE(センター・オブ・エクセレンス)となっていく可能性があります。私たちはその未来の実現を全力で支援します」
システム刷新から始まったプロジェクトは「人と組織」を変え、企業の競争力を再定義する大きな挑戦へと進化した。
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