総務省によれば2025年に7300万人だった15~64歳の生産年齢人口は、45年には5800万人と、約2割減ると予想されている。まさに「8割経済」になるのである。
「日本のマクロ的な変動もさることながら、中堅・中小企業の経営者にとって深刻なのは、『8割経済』により、自社の売上や利益が自然に減少していくことです」
竹内氏は続ける。
「たとえば、いま売上が10億円ある会社でも、何もしなければ毎年1000万円ずつ落ちていく。20年後にいきなり2億円減るのではなく、毎年、確実に目減りしていくイメージです」
前年比で見れば誤差の範囲に思える数字が積み重なり、気づいた時には打てる手が限られてしまう。
「現状維持でいい、という選択肢は、もう存在しません。一方で、オーガニック成長、つまり自助努力での成長が難しくなっています」
中堅・中小企業が市場に前例のないイノベーションを起こし、DX(デジタル・トランスフォーメーション)で劇的な生産性向上を実現するのも容易ではない。
「そこで中堅・中小企業が成長し続けるための答えの一つとして注目されているのがM&Aです。小さな企業を集約して『集合体』をつくることで成長のポテンシャルを引き出すのです」
中堅・中小企業におけるM&Aと言えば、後継者がいない会社が、やむをえず会社を譲る、引退を前提とした「出口」として語られることがほとんどだった。それに対して、竹内氏が提唱するのが「成長戦略型M&A」だ。
事業承継型M&Aと成長戦略型M&Aの大きな違いは緊急性と重要性だ。たとえば、経営者がいま80歳で後継者がいないとすれば緊急性、重要性ともに高く、すぐにでも買い手を探す必要がある。
一方で、成長戦略型M&Aとは、経営者がまだ若く緊急性が低くても、持続的成長を果たすという観点では、非常に重要度は高い。
「売り手であっても、買い手であっても、M&Aを企業の成長のための『スタート』だと捉えてほしいですね。中堅・中小企業が集合体をつくることで売上やシェアを拡大しただけでなく、生産性向上を実現した例も少なくありません」と竹内氏は話す。
また、買い手側にとって、M&Aは「時間を買う」手法である。「ゼロイチ」の価値創造のプロセスを、お金で買うことで、事業規模の拡大や付加価値向上を実現し、成長スピードを加速させるからだ。
興味深いデータもある。中小企業庁の調査によれば、M&Aを実施した企業と、そうでない企業を比較した場合、前者のほうが生産性や収益性で上回る傾向が示されているというのだ(図版)。
同社は中堅・中小企業のM&Aを幅広く手がけており、成長戦略型M&Aに取り組む経営者も増えているという。M&Aがもはや当たり前の戦略になりつつある中で、なぜ100億円企業を目指すべきなのか。
「私が『100億円』でラインを引くのは、売上30億円や50億円なら、社長一人の牽引力、いわば属人的な経営でも到達できる。しかし100億円を超えるには、組織を構造化し、仕組みで回る会社に変革しなければ届かないからです」と竹内氏は説明する。
国内において、この10年間で売上100億円に到達した企業は1823社ほど、1年当たり200社に満たない(※1)。しかし、100億円到達後の企業の経常利益は2.7%高くなり、平均賃金も約180万円アップしたというデータもある(※2)。
野心的なラインではあるが、国も中小企業庁の「100億宣言」などの施策で100億円企業創出を後押ししており、大いに挑戦しがいがある数字だ。
代表取締役社長 竹内 直樹氏
Naoki Takeuchi
成長戦略を成功に導く
日本M&Aセンターの役割
成長戦略型M&Aを絵に描いた餅に終わらせないために問われるのは、それをどのような体制で支えるかという点だ。理想としては理解できても、その実務には高度な専門性と継続的な関与が欠かせない。
M&Aは、成約した瞬間に完結するものではない。むしろ難しさはその後にある。買収後の統合、いわゆるPMI(Post Merger Integration)をどう進めるかによって、成長につながるか否かが分かれるからだ。
「PMIは、手間も時間もかかります。しかし、ここを軽く見ると、現場が止まってしまいます」と竹内氏は語り、PMIを事業の中核に位置づける。そのために、同社グループには、PMIを専門に担う専業会社がある。制度やシステムの統合に留まらず、組織設計や人事、意思決定プロセスまで踏み込み、「100日プラン」などを伴走する体制を整えている。
成約前のプロセスでも、同様の考え方が貫かれている。初期段階から、弁護士、公認会計士、税理士といった専門家が関与し、法務・財務・税務の観点で支援する。さらには契約を急ぐよりも、取引として成立させてよいかどうかも見極めている。
地域金融機関との連携も重要な要素だ。全国約9割の地方銀行や、8割の信用金庫との連携により地域の中堅・中小企業のニーズを把握するとともに、地域とともに持続的に発展するM&Aの設計に留意している。
一方で、近年はM&A需要の増加に伴い、慎重さを要するケースも指摘されている。不適切な買い手が関与するケースもある。こうした背景から、同社は自社の取り組みに留まらず、業界団体である「M&A支援機関協会」の幹事会員として活動する。
支援機関の行動指針や自主規制ルールを整備し、取引の透明性を高めることで、経営者が安心して判断できる環境を整える狙いがある。
同協会にはすでに240社を超えるM&A支援事業者が参加している。今年、創業35周年を迎える業界のリーディングカンパニーとして、この取り組みは、M&Aを一過性の取引ではなく、国内のインフラとして捉える視点を示している。
「日本の中堅・中小企業が成長を諦めない選択肢を、現実のものにしたい」と竹内氏は力を込める。
人口減少が前提となる時代に、企業は縮む市場とどう向き合うのか。問われているのは発想ではなく、実行力と継続性である。その受け皿として、日本M&Aセンターの役割が重みを増している。
※1「『100億円突破企業』の実態調査」帝国データバンク(2023年)
※2「中小企業の成長経営の実現に向けた研究会 第2次中間報告書」中小企業庁 (2024年)
株式会社日本M&Aセンター
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