リーダー待望論が蔓延して久しいが、日本社会が直面する数々の課題は一向に解決の糸口が見えない。それは、リーダーの定義の問題である。一般的、かつ万能なリーダーはあり得ない。置かれている状況に適した人格と能力を持ったリーダー、すなわち、シチュエーショナル・リーダーが必要だ。日本の次世代リーダーたちは「グローバリゼーションの流れをリードし、日本の未来を切り開くべき主体」として自らの能力や専門性に何を加え吸収し、それらをどのように統合し、活用していけばいいかを自覚するかどうかにかかっている。
グローバリゼーションとは何か
――グローバル・リーダーの育成が叫ばれていますが、日本の現状はグローバル時代に逆行するかのように内向きになっています。どうすれば「時代が求める新たな人材」を輩出できるのでしょうか。
横山 多様化し、多極化した状況の中で、現象ではなくその裏にある本質を見抜くのが難しい時代です。その意味で今ほど考える力を磨くことが重要な時代はありません。考える力を磨くにもアプローチや方法があります。最初にやるべきことは何だと思いますか。

東京大学EMP 特任教授
日本中にグローバル化、グローバル企業、グローバル人材という表現が氾濫しています。今の質問にも、グローバル・リーダー、グローバル時代とありましたね。
これほど「グローバル」が氾濫しているのに、みなさんはその意味を理解しているのでしょうか。大いに疑問です。
東大EMP(エグゼクティブ・マネジメント・プログラム)の最初の講義で、私は次のように質問します。
「グローバリゼーションと国際化(インターナショナリゼーション)の違いを説明できますか」
EMPはすでに11期目を迎えましたが、いまだにこの問いに明確に答えられる人はそれほど多くはいません。日本企業の役員でも説明できるのは3人に1人くらいだろうといわれています。
――日本企業が海外に出ていくことを国際化といっていたのに、いつの間にかグローバル化といわれるようになりましたね。
国際化とグローバル化は異なるものです。その違いを理解して、グローバリゼーションの意味を自分なりの表現で他人に説明できないのであれば、本質は見えていないということでしょう。言い換えれば、そうして定義を模索する過程で、グローバリゼーションとは何であり、何ではないのかを自分で納得する形でつかむことができるはずです。
思考するということは、語義を知る、つまり「定義する」ことから始めなければなりません。これが、考える力を磨くために最初にすることです。