数年前から企業におけるビッグデータのマーケティング活用への関心が高まり、さまざまな企業が取り組みを行っているが、実際に有効活用できている企業はまだまだ少ないのが実状だ。そういった中で注目されているのが、データの分析により将来を予見する「アナリティクス」の分野だ。そのポイントはどこにあるのか。同分野のリーディング・カンパニーであるSAS Institute Japanに取材した。
データ分析で「将来を予見」
顧客の行動の変化を捉える
「商品やサービスでの差別化が難しくなっている中、企業が顧客に選ばれるためには、インバウンド、アウトバウンドで得た顧客との接点を活用して顧客理解を深め、適切なコミュニケーションや施策を策定・実行することが大切です。そのカギとなるのが『アナリティクス』です」と、SAS Institute Japan(以下、同社)ソリューションコンサルティング第一本部部長の小笠原英彦氏は話す。

Customer Intelligence グループ 部長
小笠原 英彦 氏
すでにBIツールを用いてデータ分析に取り組む企業は多いが、これらと「アナリティクス」はどう異なるのか。
「従来型のBIによる分析は、過去に何が起きたか、今何が起きているかを把握するものです。一方で『アナリティクス』は、単なる分析にとどまらず、ROIを最大化する最適な“打ち手”を引き出すことができる点に大きな特色があります」。
つまり、過去の実績を「見える化」するだけでなく、「将来を予見」するのが「アナリティクス」というわけだ。
「具体的に、アナリティクスをマーケティングに適用した手法として、銀行や小売業で活用されている『イベント・ベースド・マーケティング(EBM)』があります。顧客の行動や購買傾向などの変化を契機(イベント)として捉え、ニーズが顕在化するタイミングで商品提案などを行うものです。同様に、顧客に解約の予兆があれば、これをいち早く検知し、適切な手を打って未然に防ぐことも可能になります。つまり、どのようなイベントを定義するかが肝となるわけですが、弊社では業種ごとにイベントライブラリを整備・保有しており、お客様のビジネス課題に応じて必要なイベントロジックをクイックに提供しています。また、離反防止やクロスセル促進など重要なビジネス課題への影響因子を過去データから発掘していく、よりきめ細かい分析サービスも行っています」(小笠原氏)。
アスクルが統合マーケティング
基盤刷新のためにSASを採用

SAS® Customer Intelligence は、顧客経験価値の最大化を支える統合マーケティングプラットフォーム。 過去の結果をフィードバックすることにより、アナリティクスのサイクル化も実現する。
カスタマー・アナリティクス・ソリューションを提供する「SAS® Customer Intelligence(図表)」の国内導入企業はすでに50社を超え、三年連続で国内トップシェアを獲得している(注)。
オフィス用品通信販売最大手のアスクルも同ソリューションを導入した企業の一つだ。担当のソリューションコンサルティング第一本部マネージャーの望月美由紀氏は次のように説明する。「アスクル様では2012年10月に、個人向けの日用品通販である『LOHACO(ロハコ)』をオープンし、販売チャネルも拡大しました。一方で、購買データやWebログなど、顧客に関するさまざまな情報は複数のシステム上に散在し、マーケティング活動に生かすことが困難な状況でした」。
(注)IDC Japan株式会社「国内BAソフトウェア市場2012年の分析と2013年~ 2017年の予測」(J13300104) 2013年8月