国内30万人が実践する「営業プロセスマネジメント」コンサルティングのパイオニア企業であるソフトブレーン・サービス(SBS)は、東京大学の稲水伸行准教授らと勝ち続ける営業組織について科学的に解明するため、共同研究に取り組む。その狙いと研究成果をSBSの野部剛社長と小松弘明会長、そして稲水准教授に語ってもらった。

営業の暗黙知を可視化し
営業プロセスを標準化する

代表取締役社長 野部 剛氏

野部 当社が提唱する「営業プロセスマネジメント」とは、科学的組織営業手法のこと。望むべき成果につながる営業プロセスを設計し、そのプロセスを管理することで、結果を最大化するマネジメント手法です。

 目指すべき結果に至る営業活動を分解し、プロセスを見える化し、標準化する。そのプロセスの計画・実行・計測・分析・改善(G‒PDCA)することができるマネジメントの仕組みのです。誰でもできる「再現性」や、データ・数値に基づき判断できる「検証性」が生まれ初めて、科学的といえます。

 当社のコンサルティング実績は、いまやあらゆる業界に及び、延べ5800社以上に上ります。

取締役会長 小松弘明氏

東京大学大学院 経済学研究科准教授 稲水伸行氏

小松 少子化による人材不足の時代に、採用した人材を育成し、活かす仕組みがある企業が今後の勝ち組となります。しかし、いまだに営業現場では科学的根拠に乏しい感覚論でのマネジメントがなされ、過去の属人的経験に依存した精神論での指導・育成が横行しているため、報われない努力を続けてしまっている営業員は、いつまでも戦力化されません。

 そうした企業を支援していくためには、当社が研究機関と共同研究に取り組むことで営業プロセスマネジメントをさらに進化させる必要があるという結論に至ったのです。

 しかし、既存研究にはマネジメントやマーケティングなどはあっても、営業をテーマにした学術的な研究はほとんどありませんでした。稲水先生との出会いにより、営業組織における共同研究を開始できたおかげで、調査研究は加速化し、コンサルティングサービスは飛躍的に進化しました。

稲水 そもそも私の専門は経営組織論ですが、お二人のお話を聞いて営業組織の研究に興味を持ちました。

 世界的に見ても営業組織の専門的な論文は少なく、研究の価値は高いと思います。営業員個人のテクニックやパーソナリティについての研究は多いですが、普通の営業員が普通に取り組めば組織として成果が上がる営業組織の研究は、見たことがありません。実際に研究を始めてみると、少しずつ共通法則のようなものが見えてきました。

 たとえば、従来はトップ営業員だけを調査対象としたうえで、営業のパフォーマンスを分けるのはコミュニケーションなどの面談スキルが大きいと結論づけてきました。しかし、組織営業を強化するには、普通の営業員がやるべきことをやれば、正しくパフォーマンスが上がるポイントを見つける必要があります。そのためにはトップ営業員だけを見るのではなく、全体のデータを取って分析しなければなりません。

 SBSが独自に2000人以上のトップ営業員と普通の営業員の差異となる行動を抽出し、業種・業界を超えて共通するコンピテンシーと具体的標準トークをまとめた「5ステップ70スキル」をはじめとした各種事前調査をたたき台として共同研究を行ったところ、面談のスキルよりも事前準備のフェーズをどれだけしっかり行うかが、パフォーマンスを大きく左右するというファクトが見えてきました。