調査会社IDCジャパンによれば、ビジネスコンサルティングとITコンサルティングを合わせた国内コンサルティングサービス市場規模は、2015年で前年比6.3%増の6463億円。6兆~10兆円ともいわれるアメリカの市場規模に比べるとまだまだ小さいが、今後は年間平均成長率3.8%のペースで市場の拡大が続き、20年には7773億円になるものと見られる。その成長要因などについて、コンサルティング業界に詳しいムービンストラテジックキャリアの2人に聞いた。
激しい環境変化に
対応するために
専門家の知見を活用

代表取締役社長
神川貴実彦氏
「テクノロジーの進化やグローバル化などが急速に進む現代において、企業経営はスピードをますます重視されています。規制緩和、業界再編、破壊的イノベーションなど大きな環境変化が頻繁に起きるなか、企業は中長期的なビジョンや施策の考案、事業ポートフォリオの再構築、M&A、業務プロセスの変更など、重大な課題に対する意思決定を短期間で集中的に遂行していかなくてはなりません」。そう語るのは、コンサルティング業界に特化した転職エージェント、ムービンストラテジックキャリア代表の神川貴実彦氏だ。
こうした激しい環境変化に対応するために、コンサルティングファームの活躍領域が広がっている。「一般の企業はモノやサービスを開発し、市場に流通させていくことが事業活動の主体であり、社員はそのオペレーションについてはプロフェッショナルです。しかし、経営戦略の立案や大規模な変革の経験は少ない。課題に対して短期間で答えを出すためには、社内の貴重な人材に慣れない仕事をさせるより、課題解決のプロフェッショナルであるコンサルタントを雇うほうが効率的だということです」。神川氏は、コンサルティング市場が伸びている理由について、そう説明する。
1990年代半ば以降のいわゆる“失われた20年”の間にコンサルティング業界へのニーズが一貫して増え続けたのは、国内市場の成熟化、グローバル化とIT化の急速な進展などによって経営課題が複雑化し、従来の延長線上では経営が立ちゆかなくなっているからだ。つまり、変革の歯車を大きく回す推進役をコンサルティングファームが担ってきたわけだ。
しかし、一口にコンサルティングファームといっても無数にあり、得意とする領域によっていくつかに分類できる。たとえば、企業トップに対して、経営戦略・事業戦略の立案を中心にコンサルティングを行うのが、いわゆる戦略系コンサルティングファームだ。もともと欧米系のファームが中心だったが、近年は日系の戦略系ファームも増えている。
世界四大会計事務所など会計ファームから生まれた総合系コンサルティングファームや金融機関の調査機関から生まれたシンクタンク系コンサルティングファームは、自社のバックグラウンドを生かしつつ、戦略から財務、組織人事、IT戦略・システム導入など幅広いサービスを提供する会社が多い。
一方、日本の独立系コンサルティングファームは、中堅・中小企業を含めた企業の経営者から部門長向けに、戦略立案から業務遂行サポート、企業再生や事業承継など、それぞれの強みを生かしたサービスを展開している。
そのほかにも、業務・IT系、組織人事系、フィナンシャルアドバイザリー系など、専門特化したコンサルティングファームが最近は存在感を高めている。