「人材が育たない」「ストレスを抱える社員が多い」といった課題を抱える企業は、研修の導入を検討する前に新たな視点が不可欠となる。30年にわたり企業の人材育成を支援してきたアチーブメントの代表取締役社長、青木仁志氏は、成果と人間関係を両立させる企業の「水質」づくりの重要性を指摘する。
水槽内の魚が元気に
泳ぎ回るためには

「言うまでもなく企業の発展は、人が育つ環境をどうつくるかにかかっています」。アチーブメント代表取締役社長の青木仁志氏は、経営者を中心として延べ35万人以上に研修を実施してきた経験を基に、こう主張する。
人が育つ組織風土は「水槽理論」で説明できるという。水槽のなかに魚が泳いでいる状態において、水質を組織風土、社員を魚に例えてみよう。水槽内で泳いでいた魚が病気になった(社員のモチベーションが下がった)時、魚を外に出して治療したとしても、水質(組織風土)が悪ければ病気を再発させてしまう。しかし、水質(組織風土)がよければ、魚は病気にならないというだけでなく、元気に水槽内を泳ぎ回る(自ら主体的に仕事をする)という状況が生じるのである。
では、元気に水槽を泳ぎ回る魚を増やすためにはどうしたらよいのだろうか。それには2つのアプローチが考えられる。第一の手法は魚が住みやすい水質にする、つまり社員が主体的になる環境をつくること。第二の手法は、魚自体が病気になりにくい丈夫さを備えること、つまり社員教育である。多くの企業は、社員の主体性が足りない時に、要因を社員にのみ求めてしまいがちだ。ゆえに第二の案としての社員研修ばかりを導入しようとするが、それだけでは一時的に魚は元気になっても、水質を整えない限り、魚はまた病気になってしまう。そこで最も重要なのが、第一の案であるよい水質づくりである。魚が元気に泳ぐ水質とは何か。それは社員が働きやすい環境、主体性を発揮する環境である。そこで重要なのは、上司と部下のマネジメント・コミュニケーションの質だという。