エンゲージメントを高める
万能薬はない
では、どうやってエンゲージメントを高めればいいのか。
上林社長はまず「エンゲージメントには幾つか誤解がある」と警告する。
「社員全員のエンゲージメントを一様に高める施策はありません。仕事や組織との結びつき方が一人一人違うからです。また、会社がいろいろ与えるだけではエンゲージメントは向上しない。社員自身が『こうしたい』という意志を持つことが最も重要なんです」。
その上で、エンゲージメントを高めるために、組織、管理職、社員それぞれのレイヤーで次のような施策が必要だという(下図参照)。
まず組織が行うべき施策は、理念やビジョンを浸透させ働きやすい環境を整えることだ。「自分たちが事業を通じてどうやって社会に貢献していくのかをミッションやビジョンで落とし込めている会社の方が、エンゲージメントは高い傾向にあります」(上林社長)。例えば同社のクライアントのある食品会社は、優れた野菜の加工製品を作ることのみをミッションにしているのではなく、そうした事業を通じて世の中の野菜不足という問題を解決するというメッセージを、社会および社員に対して伝えることで、エンゲージメントを高めている。
次に管理職が行うべき施策は、社員一人一人に直接関わり、各人の意向を引き出し、それを組織のビジョンとつなげていくことだ。「組織のビジョンを部下が理解できる言葉に翻訳して説明することがマネジャーの役割。管理職がエンゲージメント向上の鍵を握っています」(上林社長)。
最後に社員一人一人が行うべき施策は、会社や組織を通して自分は社会にどう関わりたいのかを意識し、職場の関係者と良質なコミュニケーションをとることだ。仕事を「自分ごと」にしないとエンゲージメントは高まらない。
そこでNEWONEでは、社員が自ら「変わりたい」と思ってもらうための研修プログラムを多数用意している。そのうちの一つが「エンゲージメント・ゲーム」だ。このプログラムでは、3~6人が一つのチームとなって複数のプロジェクトを推進していくのだが、業績を追求する中でチームのエンゲージメントの上がり下がりを体感する仕組みになっている。それらを通じて、個人の異なる価値観と組織ビジョンの紐づきの重要性や、業績達成とエンゲージメント向上の両立の感覚を持ってもらうことが狙いとなっている。体感を通じて、エンゲージメントを身近なものにし、管理職が取り組みたいという意欲を高める支援をしているのだ。