ペルソナ分析、カスタマージャーニーの描画といったカスタマーエクスペリエンス(CX)向上への一般的なアプローチが大きく変化しようとしている。その変化をもたらしているのが、データとテクノロジーの進化だ。データにテコを利かせてCXを最大化する新たなアプローチについて、ベイカレント・コンサルティングに聞いた。

ペルソナを3軸方向へ拡張することが可能に

 これまでCX向上のための施策は、①ペルソナを設定し深掘りする、②設定したペルソナを前提にカスタマージャーニーを描く、③カスタマージャーニーからペインポイント(苦痛・不満点)をあぶり出し、解消する、という3ステップで進めるのが王道とされてきた。しかし、このアプローチにはいくつかの弱点があった。

 まず、ペルソナ分析の真骨頂は特定の人物像の深掘りにあるため、インサイトや施策のカバレッジを犠牲にせざるを得なかった。また、ある特定の時点でのペルソナを深掘りするため、時間経過による影響を踏まえた見直しに弱い面があった。さらには、深掘りのための定量分析をする上で十分なデータが取れない(例えば、行動・感情のデータなど)という限界もあった。

「1つのペルソナを設定しても、ライフステージによってその行動は変わり、短時間で人の感情は移ろうものです。ペルソナ分析ではカバーできない弱点を誰もが認識しながらも、他に選択肢がないので仕方なくそのアプローチを採り続けていた面があります」。ベイカレント・コンサルティング執行役員デジタル・イノベーション・ラボ担当の則武譲二氏は、そう語る。

ベイカレント・コンサルティング
執行役員
デジタル・イノベーション・ラボ担当
則武譲二氏

 だが、「機械学習や5G(第5世代移動通信システム)、VR・AR・MR(仮想現実・拡張現実・複合現実)などさまざまなテクノロジーの役者とデータがそろったことで、ようやく限界を超えられるときがやってきました」と、同ラボ チーフデータサイエンティストの小峰弘雅氏は指摘する。

 これまで取れなかったデータ、分析したくてもできなかったデータを、よりきめ細かく、そして深く収集・分析できるようになったのだ。それにより、「ペルソナを3軸方向に拡張することが可能となり、ペルソナを“点”ではなく立体的に捉え、より的確なCX向上策を実行できるようになったのです」(則武氏)。