アフターコロナの先がまったく読めない時代を生き抜くためには、アジャイル経営の実現が不可欠だ。だが、従来の統制型リーダーシップでは、意思決定のスピードを高め、価値を生み出す組織の実現など、到底不可能。では、新しいリーダーシップ像は、どのようなコミュニケーションスタイルなのか。パーソル総合研究所執行役員の髙橋 豊氏に聞いた。
求められるリーダーの新しい
コミュニケーションスタイル
――アフターコロナでは、コミュニケーションスタイルそのものの見直しが迫られています。また、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)やM&Aによるアジャイルな経営の実現を目指しています。

ラーニング事業本部長
髙橋 豊
YUTAKA TAKAHASHI
大手電機メーカー子会社、日系コンサルティングファームを経て、監査法人系人財育成コンサルティングにて人財育成全般のコンサルティング及び管理職育成コーチングを担当。2018年9月にパーソル総合研究所入社。2019年4月より現職。
多くの企業がテレワークを導入するなど、新たな働き方を経験しました。その一方で、「どのように管理すればいいのか」といった質問が絶えません。
これまでのリーダーは、背中を見せていれば良かったのです。しかし、テレワークではその背中を見せることはできません。従来とは異なるスタイルでコミュニケーションを取り、組織をまとめて価値を生み出さなければならないのです。
では、何がカギとなるか。「信頼」と「言葉の力」です。
相手に期待し、どれだけ自分の考えを相手に伝え、燃え上がらせることができるか。また、相手に対して何を聞くか。聞いたときに、どういう受け答えをするか。それが重要になると思います。
さらに、企業はDXやM&Aでアジャイルな経営を目指しています。しかし、古い企業文化のままでは従来の事業全体を変えることは難しいでしょう。
なぜなら、マネジャー以上の人たちのコミュニケーションスタイルが古いまま、若い人たちだけに新しい行動を押し付けているからです。上から押し付けるスタイルが変わらない限り、成功はしないと思います。
実現させるためには、マネジャー以上の人たちのマインドセットを変える必要があります。これまでのリーダーの役割は、部下のために何かをするという上下の関係でした。この状態から、全員がリーダーシップを発揮できる同列の関係性に変えていく必要があります。これなくして、アジャイルな経営の実現はないと思っています。
この関係性を変えていく方法が、エドガー・シャイン先生(MITスローン経営大学院名誉教授)が提唱する「ハンブル・リーダーシップ」だと考えています。
そして、目指すべき組織は「ホラクラシー」(それぞれが役割を持ちながら、企業の目的のために自主的に動くフラットな組織)です。従来の統制型のリーダーを残したままでホラクラシー組織にしても、混乱するだけです。だからこそ、リーダーのコミュニケーションスタイルをハンブル・リーダーシップに変え、早急に企業文化そのものを変える必要があるのです。