
企業と企業が垣根なく手を組み、リソースを補完し合えば、新たなイノベーションが生まれる──。そんな期待で2010年代に盛り上がってきたオープンイノベーションだが、多くの企業が有効活用できないまま、コロナショックの広がりで活動自体の見直しに直面している。このような状況下において、新たな日常をつくることが求められるポストコロナは、新たなビジネスを生み出す大きなチャンスとも言える。提携ありき、出資ありきといった、目的を見失った形ばかりのオープンイノベーションから、顧客課題解決にフォーカスしたアウトプット重視の事業化アプローチ「ビジネスプロデュース」へ。企業の進むべき道を新規事業によって示す時代がようやくやってきた。

Satoru Tanahashi
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 パートナー
Monitor Deloitte Business Produce リーダー
大学在学中の2005年に起業し、東京と上海のスタートアップの共同創業・経営者を経験した後2012年にデロイト トーマツ コンサルティング参画。多くの事業創造型コンサル ティングで実績を挙げ、現在はデロイト トーマツ全体のBusiness Produceリーダーを務めている。
コロナショックで本質が問われるオープンイノベーション
オープンイノベーションブームに乗り、新規事業創出をめざす大企業がベンチャー企業と手を組む例は増えているが、その多くが事業化に至らず頓挫している。イノベーションの共創のために始めたはずの多くのプロジェクトが、結果として大企業側の一方的な「プログラムやりっぱなし」「投資しっぱなし」で終わってしまっており、近年では有望なベンチャー企業の中には、大企業が次々に企画するアクセラレーションプログラムや政府プログラムから距離を置くと公言する企業も出てきている。これが、大企業の「オープンイノベーションごっこ」と揶揄されるゆえんだ。
そして、終身雇用カルチャーが色濃く残る日本企業の多くは、そもそも経営の重要な部分に外部リソースを起用することへの抵抗感が根強い。新しいビジネスのために異なるケイパビリティを持つ者同士が共働するというオーソドックスなビジネスのアプローチを、わざわざ「オープンイノベーション」と呼ぶことには、「外注」を聞こえのいい表現に言い換えたいという思惑もある。しかし、根本的なカルチャーが変わらなければ変革はおぼつかない。
こうした成果の見えなさに、コロナショックが追い打ちをかけている。デロイト トーマツ ベンチャーサポートが2020年4月に実施したアンケート調査では、「ベンチャー企業への投資を含むオープンイノベーション活動を昨年比30%以上縮小させる」と回答した企業が過半数にのぼった。
この状況を改善する道はあるのだろうか。それを考える前に、まずはこうした新規事業プロジェクトが失敗しがちな原因を整理してみよう。