米ゼネラル・エレクトリック(GE)のシェアードサービスセンターを前身とするジェンパクトは、リーンシックスシグマのDNAを継承し、さまざまな企業の業務プロセス最適化やデジタル変革を支援してきた。コンサルティングとビジネス・プロセス・アウトソーシングが一体化した同社のサービスは、サプライチェーンの変革においても大きな成果を上げている。

縦割り組織に横串を通し一気通貫でつなぐ

「今回のコロナ禍では、需要と供給の変化にきちんと対応できるサプライチェーンマネジメント(SCM)ができている企業と、できていない企業では、提供価値や業績に大きな差が生じることが図らずも浮き彫りになりました」。そう語るのは、ジェンパクト代表取締役社長の田中淳一氏だ。

 需給の変化に対応できなかったのは、縦割り組織の壁を乗り越えられず、システムの統合や業務プロセスの標準化を実現できていない企業だ。そうした課題を克服するには、計画から調達、製造、物流、販売といったサプライチェーン全体をエンド・トゥ・エンドでつなぐことが必要になるが、企業にとってはわかっていても実現が難しいのが現状だ。

 そうした企業に対してジェンパクトは、自らがクライアント企業に深く入り込んで縦割り組織の“横串”となり、サプライチェーン全体をつなぐ支援を行っている。実際にそれをどのように実現しているのか、米国の大手食品メーカーA社の事例で紹介しよう。

 ジェンパクトでは過去10年近くA社のシェアードサービスセンター(SSC)のビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を引き受けている。一般的なBPOと異なるのは、A社のSSCで働くジェンパクトのスタッフが、A社の社内トレーニングを受け、企業理念や文化も深く学んでいることだ。そのうえで、A社の社員と一緒になってオペレーション最適化を実現してきた。このようにクライアント企業の社員と同等かそれ以上にミッションやオペレーションに精通し、コスト削減という目に見える成果を上げることで、ジェンパクトは縦割り組織の横串を通す存在と認められる信頼を得ていったのである。

 BPOで培った信頼によって、ジェンパクトはA社からアナリティクスやビジネスプロセス変革といった、より戦略性の高い領域についても、コンサルティングを依頼されるようになった。

ジェンパクト
田中淳一 代表取締役社長

「コンサルティングチームとBPOチームが一体となって、お客様を長期に渡って支援できるのがジェンパクトの特徴であり、強みです。クライアント企業のCEOからオペレーション現場の人たちまで、あらゆる階層の人たちと対話を重ね、その人たちと同じ方向を目指し、共に悩みながら課題を解決していくのがジェンパクトのスタイルです」と、田中氏は語る。

 このため、ジェンパクトはクライアント企業の業務の細部まで理解しており、その企業が保有している多様なデータについても把握している。その力が遺憾なく発揮されたのが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う、大きな需要変動の局面だった。

 米国では外出禁止令が出され、自宅で食事する機会が増えたことから、A社が製造する調味料の需要が急増した。当初は供給が追いつかずサプライチェーンが一時的に混乱したが、ジェンパクトとA社は需要予測やサプライチェーン計画を共同で行い、需要の少ない商品や業務用商品の生産を減らし、また同一ブランドのサイズ違いの商品を絞り込むことで需要急増に対応、安定供給を実現した。

 またA社では、ジェンパクトの支援を受けてAIを活用したアナリティクスを実行することによって、在庫量の削減や生産性の改善にも成功した。その手法はこうだ。

 供給停止や在庫過剰といった問題が発生した場合、A社はその原因を調査し、対策を講じていたが、実際に解決に至っていたのは従来、25%程度だった。残りの75%については人手や分析スキルの不足などから、未解決のままとなっていた。そこで、解決できた25%について問題の原因と対策をAIに学習させ、残り75%の問題を分析した。これによって多くの問題が解決され、在庫削減や生産性改善に成功したのである。