2人の時計師が創始し、世界三大ブランドに数えられるスイスのオーデマ ピゲ。1世紀半に及ぶ歴史と伝統を背景にして、21世紀の革新を象徴するのが最新の「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」だ。デビュー時に含まれたクロノグラフは、現在手に入る最も優れた一つに数えられるムーブメントと洗練されたデザインが新たな魅力を開拓する。デビュー2年目の2020年は、新たにバイカラーのゴールドケースと5色のカラーダイヤルが登場。その洗練されたセンスが「CODE 11.59」に新たなファッション感覚を生む。(文・菅原茂/写真・奥山栄一)

WG×PGのバイカラー、ケース径41mm、30m防水、自動巻き。308万円(税込み)*表示価格は2020年12月現在のものとなります
オーデマ ピゲは、フランスとの境に横たわるジュラ山脈のジュウ渓谷で1875年に誕生した。
スイスでは2人の人物名を組み合わせてブランド名とする例が古くからあるが、オーデマ ピゲは、工房を創設した時計師のジュール=ルイ・オーデマが、幼なじみの時計師エドワール=オーギュスト・ピゲを迎え入れ、2人の姓を組み合わせて「オーデマ ピゲ」としたのが商標や社名の起源である。
スイス屈指の技術を持った時計ブランドは、ミニッツリピーターや永久カレンダー、クロノグラフといった高度な複雑時計を最も得意とし、19世紀終わりから20世紀にかけての博覧会での受賞が名声に拍車を掛け、世界に販路を広げるに至った。
腕時計が主流になった20世紀にも複雑機構を取り入れた腕時計や世界最薄の腕時計を開発するなど、スイスのリーディングブランドとして躍進を続ける。1972年には、高級時計に初めてステンレススチールを用い、ケースとブレスレットが一体型の斬新なデザインを導入した「ロイヤル オ-ク」を発表。今や盛んなラグジュアリースポーツウオッチの先駆けをなしたことはあまりにも有名だ。

さらに「ロイヤル オーク」から派生したよりスポーティなコレクション「ロイヤル オーク オフショア」が1993年に発表されるなど、名作が豊富なオーデマ ピゲ。それに次ぐ第3の話題作として今注目されるのが、26年ぶりの新しいコレクションとして2019年に誕生した「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」である。
時計の針のスタートとゴールを象徴する12時の1分手前を連想させるこの“11.59”という数字は、常に今までにないものに挑む伝統的な社風を背景にして新たなスタートを切る瞬間を思わせる。実際この時計は、外枠を成すラウンド型ケースに八角形のミドルケースを挿入した複雑な立体構造に伝統的なデザインコードと21世紀の革新的なコンセプトがブレンドされ、これから展開する未来の時計をイメージさせるところが実に絶妙だ。
秀逸なのはデザインにとどまらない。シンプルな自動巻き3針からクロノグラフ、そして三大複雑機構と称されるパーペチュアルカレンダー、トゥールビヨン、ミニッツリピーターをもカバーする最先端の自社ムーブメントにもまた格別な魅力があり、時計に精通した愛好家や収集家をもうならせるに十分だ。