顧客の成功を自社の成功として捉えるカスタマーサクセスは、企業にとってどんな意味があり、どう取り組めば良いのだろうか。カスタマーサクセスは全社レベルで取り組む必要があり、そこには“サイエンス”と“アート”の両輪がある、とバーチャレクス・コンサルティングは提唱している。その先の社会への貢献までも視野に入れた同社の考え方を聞いた。
正しい顧客と向き合いより深い関係を築く
「企業として顧客と向き合う、という観点では、カスタマーサクセスはCRMとほぼ同義です。違いは顧客の“成功”にフォーカスしている点です」とバーチャレクス・コンサルティング取締役常務執行役員の奥村祥太郎氏は語る。CRMはその字のごとく「顧客との関係を管理する」という企業側を起点とした発想ともいえるが、カスタマーサクセスは顧客起点の発想である。

奥村祥太郎
取締役 常務執行役員
カスタマーサクセスが重視されるようになった背景には、テクノロジーの進化がある。同社常務執行役員の森田智史氏は「顧客理解の解像度がテクノロジーによって大きく向上しました。オンラインだけでなく、オフラインのオンライン化により、顧客の属性・行動など詳細な情報を入手できます。それを踏まえてニーズに積極的に対応することが求められています」と話す。
顧客との良好で継続的な関係を構築するために、顧客のニーズを正確に把握し、タイム・トゥ・バリューを最短化しつつ、顧客が求める体験・価値を提供し続ける。その結果として、企業も利益を上げる、という発想こそが、カスタマーサクセスの真髄だといえる。しかし、見逃してはならない前提がある。企業側も顧客を選ぶということだ。
「正しい顧客と正しい付き合いをしてこそカスタマーサクセスが実現できます」と森田氏は強調する。やみくもに顧客至上主義を貫こうと無理をすれば、営業活動が過剰になったり、ROIの低い取り引きに終わってしまったりする。重要なのは本当の意味でのウィン・ウィンの関係を構築することだ。
「正しい顧客を選び選ばれ、深い関係が構築できれば、共創も生まれます。企業が提供する価値を正しく理解した顧客からは、企業自身がこれまで気づいていなかったような、より良いサービスの示唆や新商品のアイデアなどがもたらされることもあるでしょう。結果、それが企業の持つ色をより濃くします。つまり顧客から見た企業の解像度も上がるのです」と奥村氏は話す。