創業以来独立経営を保ち、高度な専門技術と先進的なデザインを武器にして独創的なモデルを発表するオーデマ ピゲは、スイス高級時計の最高峰ブランドの一つ。「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」と「ロイヤル オーク オフショア ダイバー」の最新作からその革新性と魅力をひも解く。(文・菅原 茂/写真・奥山栄一)

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ
ピンクゴールド×ブラックセラミックケース、ケース径41mm、30m防水、自動巻き、約70時間パワーリザーブ。495万円(税込み)

21世紀の革新を体現する
「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」

 スイスの数ある高級時計のなかでも、時計師のジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲの2人によって1875年に誕生したオーデマ ピゲは、伝統と格式を誇る屈指の老舗だ。複雑時計の高度な技術を継承しながら、1972年にラグジュアリースポーツウオッチの元祖として有名な「ロイヤル オーク」を時代に先駆けて開発するなど、革新性によって名声を博し、世界三大時計ブランドにも数えられる。

 また、創業以来途切れることなく時計製造を続けているだけでなく、家族経営でいかなるグループ企業にも属さず、独立性を堅持して開発や製造をすべて自社で行い、オリジナリティ豊かな製品を世に送り出す一貫生産メーカーという、スイスでもきわめて稀な存在なのもオーデマ ピゲの大きな特色である。

 そのオーデマ ピゲが5年の研究開発を経て、26年ぶりの新たなコレクションとして2019年に発表したのが「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」(以下、CODE 11.59)だ。全体のフレームを成すトップとケースバックの間に「ロイヤル オーク」に通じる8角形のミドルケースを挿入した複雑な3層構造のケースは、ラウンド(丸形)としては前代未聞のデザインである。

2021年発表の新作。ホワイトゴールド×ブラックセラミックケースのモデルにラバー加工ストラップを組み合わせたモデルも用意

 真正面から見ると、少々レトロ感が漂うスタイリッシュなルックの腕時計に思えるが、斜めから見ると、3層構造の立体的なケースから未来を先取りするダイナミックな造形が姿を現すという多面性を持つ。すなわち、一つの腕時計にクラシックとモダン、ドレッシーとカジュアル、エレガントとスポーティといった対を成す要素が同時に存在し、まさに伝統と革新が絶妙にブレンドされていることに気づくのである。

 オーデマ ピゲの意図は「CODE 11.59」という、開発途中のプロトタイプに用いるコードネームを思わせるモデル名に明白に表現されている。CODEとは、挑戦(Challenge)、遺産の継承(Own)、追求心(Dare)、進化(Evolve)を組み合わせたもの。そして「11.59」は、12時の1分前を意味し、新しい一日へと切り替わる瞬間を象徴する。

 伝統的なデザインコードと21世紀の革新的なコンセプトがブレンドされ、これから展開する未来を背負って立つフルコレクションとして考案されたのが、この「CODE 11.59」なのだ。