(右より)三井不動産 DX本部 DX二部 部長 塩谷 義氏、イグニション・ポイント パートナー 古嶋十潤氏

三井不動産はコロナ禍の2020年4月にDX本部を設立し、技術人材も積極採用しながら、「事業変革」と「働き方改革」の両軸からデジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進している。これを支援するのがDXコンサルティングを主力サービスとするイグニション・ポイント(以下、IGP)だ。DXの推進で大切にしている視座、DX成功のカギなどについて、両社のキーパーソンに聞いた。

価値あるビジネスの創出に必要なDXの視座とは

──DX本部の設立から1年。コロナ禍の状況で三井不動産のDXはどう進展したのでしょう。

塩谷 コロナ禍もあり顧客行動のリアルからのデジタルシフトが加速しています。一方、リアルが持つ価値が再認識されたのも事実です。三井不動産グループの強みであるリアルの価値にこだわり、それをデジタルの世界でも発揮できる顧客体験を創出すべくDXに取り組んでいます。

古嶋 小売りをはじめ、オフラインのビジネスをオンラインでも展開する企業が増えていますが、それは非常に大きなチャレンジです。その壁を突破するためには、社内でデジタル人材が活躍し、データ利活用を強みとする外部のベンダーと連携するなどの必要があります。三井不動産様はいち早くDXに着手し、制度整備や組織強化、即戦力人材の積極採用など、迅速な意思決定の下、全社を挙げてDX推進に取り組まれている印象です。

──三井不動産がDX推進で大切にしている視座と、その成果は。

塩谷 我々は顧客起点で仮説を構築し、徹底的に検証を繰り返します。例えば、実現したい価値を最低限達成できるプロダクト(MVP/Minimum Viable Product)を素早くつくり、顧客の反応を得る検証が有効です。そして仮説・検証の先にあるゴールまでの道筋を“すごろく”のようなステップで示し、ゴールの世界観や価値をストーリーで示す。我々はこれらを「戦略ストーリー図示」と呼んでいます。

「顧客起点で、やりたいことをやるべきことに変えること」「顧客との対話を通じ、仮説を検証すること」「目標達成に向かった進捗を示すこと」の3つを実行することが、DXの「質」や「生産性」を高めることにつながり、ひいては価値があって儲かるビジネスが創出できると考えています。

三井不動産
DX本部 DX二部 部長 塩谷 義氏

古嶋 顧客起点の仮説・検証、MVP検証に加えて、小さな単位で設計・開発・テストのサイクルを高速で回していくアジャイル開発がDXプロジェクトでは重要です。また、戦略ストーリーを示しながらゴールに向かっていくには、プロジェクトリーダーが現場に寄り添い、事業部門とデジタル部門を巻き込んでワンチームで前進していくことがポイントになります。

イグニション・ポイント
パートナー 古嶋十潤氏