日々進化するデジタルテクノロジーは、企業経営にどのようなインパクトをもたらすのだろうか。マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師で、「学習する組織」の理論を世に広めたピーター・センゲ氏と、NTTデータ代表取締役副社長執行役員の山口重樹氏が、デジタルテクノロジーと「学習する組織」の関係について議論を交わした。(構成:小林直美)

*『デジタル変革と学習する組織〜「顧客価値リ・インベンション戦略」を実践する組織と人財』から一部抜粋して掲載

山口重樹 Shigeki Yamaguchi
NTTデータ代表取締役副社長執行役員。公共・社会基盤分野担当、中国・APAC分野担当、ソーシャルデザイン担当。
1961年兵庫県生まれ。1984年一橋大学経済学部卒業、同年日本電信電話公社入社。製造業、小売・流通・サービス業でのシステム開発、新規事業創出に従事し、特にコンサルティング、ERP、Eコマース、オムニチャネル、ペイメントの拡大に注力。近年は中国・APAC地域での事業拡大、デジタルソサイエティーの実現に向けた取り組みも推進。2018年6月より現職。著書に『デジタルエコノミーと経営の未来』(三品和広教授と共著(東洋経済新報社、2019年)、『信頼とデジタル』がある。(三品和広教授と共著(ダイヤモンド社、2020)

山口 私はマネジャーになりたてのころ、センゲ先生の『学習する組織 システム思考で未来を創造する』を読み、感銘を受けました。そして、自分が担当する組織で「学習する組織」の実践に努めてきました。私が担当した組織では2016年に「デジタルの力でお客様の事業変革を支援する」との思いを込め「トラステッドデジタルパートナー」というビジョンを掲げています。

 ビジョンをお題目に終わらせないために、ビジョンを討論する場や成功事例を共有する場を定期的に設けて浸透させる努力をしてきました。その結果、私が当時担当していた事業は、みんなの頑張りもあって2016年に約4000億円だった売上げは2020年には6000億円に成長しています。この取り組みを通じて、「学習する組織」は企業の成長と社員の成長に役立つ考えだと思いました。さらに、デジタル化の進展により、「学習する組織」は、高度化・加速するのではと考えました。