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パナソニックの持ち株会社化に伴って発足したパナソニック コネクトは、ハードとソフト、クラウドを組み合わせたサイバーフィジカルシステムの構築によって、ビジネスモデルの変革を果たそうとしている。そこでカギを握るのが、システムの自律性を高めるAI(人工知能)である。サプライチェーン領域におけるソリューションの世界大手ブルーヨンダー(Blue Yonder)という切り札を活かすためにも、同社がAIにかける期待は大きい。
同社CTO(最高技術責任者)の榊原彰氏とDeloitte AI Institute所長の森正弥氏の対話から見えてきたのは、サプライチェーン領域でAIを鍛えることによる、AI進化の新たな可能性である。
IBMとマイクロソフトで大きな変革を経験
森 榊原さんは日本アイ・ビー・エム(IBM)、日本マイクロソフトを経て、パナソニック コネクトの前身であるパナソニックの社内カンパニー、コネクティッドソリューションズ社にCTOとして参画されました。多彩な経歴をお持ちですね。
榊原 IBMではシステムエンジニアとしてキャリアをスタートし、金融機関や製造業のシステム開発を担当しました。その後、社内にシステムアーキテクトという職種ができて、アーキテクトとしてシステムインテグレーションに長く携わった後、東京基礎研究所でサービス・オリエンテッド・アーキテクチャー(サービス指向のシステム設計様式)のモデリングなどを研究しました。
研究所の仕事は面白かったのですが、コンサルティング部門のグローバル・ビジネス・サービス(GBS)に呼び戻されて同事業のCTOを務め、IBMでのキャリアの最後はスマートシティ開発に携わるスマーター・シティ事業のCTOでした。
森 システム開発の現場から上流工程を主導するアーキテクト、そして基礎研究と、テクノロジー全般の知識を身につけられたうえ、企業コンサルティングの経験まで積まれたわけですから、なるべくしてCTOになられた感じですね。IBMではディスティングイッシュトエンジニア(技術理事)でもあったんですよね。何人くらいいらっしゃったんですか。
榊原 当時は日本で20人くらい、世界で500人ほどだったと思います。
森 IBMのテクノロジー組織にはどんな特徴がありましたか。
榊原 IBMは世界中の大企業がクライアントで、産業・技術分野ともにカバレッジが広かったので、グローバルにテクニカルコミュニティが形成されていました。横のつながりが強かったですし、経営陣との距離が近かったですね。
たとえば、アカデミー・オブ・テクノロジーというグローバルなコミュニティは、CEOやそのほかのCxOから新技術の動向やビジネスに必要なテクノロジーなどに関して諮問を受け、答申していました。
このアカデミーから選抜されたチームは取締役会直結で、企業を買収する際にテクノロジーのデューデリジェンスなどを行っていて、私も手伝ったことがあります。
森 その後、日本マイクロソフトのCTOに転身され、ソフトウェア開発拠点であるマイクロソフトディベロップメントの社長を兼務されたわけですが、マイクロソフトにはどんな魅力を感じましたか。
榊原 マイクロソフトはPC用ソフトウェアの開発・販売やライセンス事業が中心の会社でしたが、サティア・ナデラ氏がCEOに就任した2010年代半ば以降、クラウド事業とリカーリング(継続・循環)モデルに大きく舵を切りました。複合現実などの新しいテクノロジーにも積極的に投資していて、そういうスピードとダイナミズムが魅力的でしたね。
森 IBMとマイクロソフトでの経験は、パナソニック コネクトでどう活きると思いますか。