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顧客ロイヤルティの向上で注目されるコミュニティサイトだが、盛り上がらず、短命に終わる例は後を絶たない。そうした中、10年にわたってコミュニティを維持・拡大してきたのが、森永製菓の「エンゼルPLUS」だ。高いアクティブ率を保ち、会員数が75万人を超えるまでに成長できた理由は何か。サイト運営を担当する同社マーケティング本部広告部長の猪瀬剛宏氏と、その支援に当たるイーライフのエグゼクティブアドバイザー、石井龍夫氏に聞いた。
高いアクティブ率を保ち会員数が75万人超に
森永製菓がコミュニティサイト「エンゼルPLUS」を開設したのは、2013年11月。産業界でも先駆け的な存在で、開設からすでに10年が経過。その会員数は75万人超(2023年10月現在)、PVは月平均110万、アクティブユーザーは月平均14万人にも上る。サイト内では、企業の担当者と会員との対話はもとより、顧客である会員同士の活発な交流も目立つ。
エンゼルPLUSを立ち上げた理由と目的について、同社広告部長の猪瀬剛宏氏は「当時、スマートフォンが急速に普及し、消費者みずからが情報を収集して発信するようになり、メーカーからの一方的なマス広告が効きづらくなるのではないかという危機感がありました。そこで注目したのが、お客様と直接つながることができるコミュニティサイトの開設でした」と語る。
現在の主なコンテンツは、お菓子好きな仲間と語り合える「掲示板」をはじめ、写真を投稿できる「エンゼルギャラリー」、気軽に参加できる「投票」「クイズ」、管理人ブログ「KAZのつぶやき」など。運営については「お客様と長く、深く、密につながることを意識してきました。そのため、目指してきたのは会員さんがいかに投稿しやすく、会話が盛り上がるサイトにするかということでした」(猪瀬氏)。
サイト開設に伴い、森永製菓が頼りにしてきたのが、インタラクティブマーケティングを支援するイーライフが提供するコンサルティングと統合デジタルマーケティングプラットフォーム(CS2)で「運営ノウハウやデータ解析とその活用」だったという。
イーライフのエグゼクティブアドバイザーで、かつて花王でブランドマーケティングに携わり、デジタルマーケティングにおいても第一人者として知られる石井龍夫氏は、同サイトについて「会員同士で仲間意識が醸成され、投稿が投稿を呼ぶといったように森永製菓の手を離れたところでも盛り上がっています。要するに、良質なUGC(ユーザー生成コンテンツ)が生み出されているわけです。会員が自走的に熱を広げてくれる理想的な状態といえるでしょう」と解説する。
その顕著な例が、2014年に会員の投稿から始まった「おかしでしりとり」だ。投稿しやすい人気コーナーとなり、会員同士のしりとりが今も続いている。一方、その活動はサイト内に留まらない。エンゼルPLUSではリアルイベント「おやつサミット」に注力しているのも大きな特徴で、1会場30名×4回(計120名)を対象にお菓子のクイズ大会やお菓子のパッケージを使った工作などを行っている。コロナ禍前は全国15都市に森永社員が赴き開催してきたが、どの都市でも抽選になるほどの人気ぶりだ(2023年は7都市で開催)。
もっとも、運営がうまくいっているとはいえ、コミュニティサイト自体は売上貢献などが数字として見えにくい。