その点について、猪瀬氏は「さまざまなマーケティング活動のほか、社内にポジティブな影響をもたらしています。たとえば、アンケート調査を実施すれば、たちまち5000件を超える回答が集まります。リアルイベントでは当社のマーケターが商品開発秘話などをお話しすることがありますが、それに対していろいろな質問や意見が出ることに驚き、その『森永愛』の深さには感動します」と語る。

エグゼクティブ アドバイザー
石井龍夫 氏(右)
TATSUO ISHII 花王で数々のブランドマネジャーを歴任、デジタルマーケティングセンターを設立し同センター長を務める。2017年現職に就任。日本マーケティング協会マーケティングマイスター、日本アドバタイザーズ協会デジタルメディア委員会委員、早稲田大学大学院経営管理研究科非常勤講師ほかに携わる。
森永製菓
マーケティング本部広告部 広告部長
猪瀬剛宏 氏
TAKEHIRO INOSE
1991年森永製菓入社。2003年マーケティング本部。2007年営業マネジャー、2014年マーケティングマネジャーを経て、2018年4月より現職。同社のファンコミュニティ「エンゼルPLUS」の責任者。エンゼルPLUSでは、お菓子好きなお客様同士が気軽に楽しめて、ゆったりくつろげる場づくりを目指している。
同社では、KPI(重要業績評価指標)の一つとして顧客ロイヤルティを測るNPS(ネット・プロモーター・スコア)を採用している。NPSは「推奨者」の割合から「批判者」の割合を差し引いて算出するが、「中立」的な回答が多い日本ではマイナスになりがちな中、直近の調査では、会員はプラス56、一般の顧客はマイナス31だった。50超という驚異的な数字が出るのは「森永愛」が深い会員が多い証といえる。この数値の違いは購買貢献に表れ、会員は一般の顧客の2.6倍も森永のお菓子を購入しているという。
当然ながら、会員はSNSなどで製品情報などをどんどん拡散する。「森永大好き会員」のクチコミ効果がいかに大きいかは容易に想像できるだろう。
これだけではない。最近は、会員と商品の共創にも取り組んでいる。これまでキャンペーン景品の仕様やデザインなどをともにつくってきた。いよいよ来春には共創による初の新商品が市場投入される予定だ。
「イーライフではPRM(パートナー・リレーションシップ・マネジメント)という考え方を提唱しています。企業と積極的に協働してくれる会員をパートナーとして位置づけ、関係性をより深くすれば、既存会員が新たなお客様を育ててくださり、売上向上にもつながるのです。こうした関係を築けば、森永製菓のように会員との共創も可能になります」(石井氏)
実は、このような取り組みが社内でも認められ、2023年にエンゼルPLUSは「社長賞」を受賞している。「成果が見えにくいコミュニティサイトを成功させるために最も重要なのは『全社事』として取り組むこと。社長賞を受賞した意義は非常に大きいといえます」(石井氏)
顧客一人ひとりと心地よいコミュニケーションを目指す
森永製菓ではいま、エンゼルPLUSだけでなく、インスタグラムやXなどの投稿に対しても同社社員やスタッフが一人ひとりに返信する「One to Oneコミュニケーション」に力を入れている。より多くの人に親近感を持ってもらうのが狙いだ。「『森永製菓の新商品がおいしかった』といったコメントを社員が見つけてお礼の返信をしています。こうした会話が月に2000件を超えています」(猪瀬氏)
このようなコミュニケーションは企業イメージの向上やファンを増やす効果が期待できるが、労力と時間がかかるうえ、人海戦術にも限界がある。
その解決策としてイーライフでは、多様化するコミュニケーションチャネルを統合・横断し、顧客一人ひとりに心地よい距離感で一貫した顧客体験の提供を実現するAIチャットボットサービスを2024年春頃にリリースする予定だ。イーライフのAIチャットボットサービスによって、どのチャネルでも24時間・365日、顧客に合わせたOne to Oneコミュニケーションが提供可能となる。森永製菓の顧客コミュニケーションマーケティングの可能性も大きく広がりそうだ。
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