複雑な技術開発は不要である

 2014年創業のマーキュリー・ファイナンシャルは、顧客の信用情報の回復を助けるという大きなミッションを掲げた、小さなフィンテック企業だ。

 同社のCEOで財務経験の長いジム・ピーターソンは当初から、自社サービスの中核を成すパーソナライズされたカスタマージャーニーの構築には、AI(人工知能)が不可欠だと認識していた。そこで同社は2021年、全顧客に適切なタイミングで、適切なチャネルを通じて、適切な順序で、適切なナッジを与えることができるAI駆動型エンジンを探し始めた。

 ナッジとなるのは、複数のクレジットカードに分けて支払うよう促したり、利用限度額に迫っていることを顧客にそっと警告したりすることかもしれない。テキストメッセージに反応する人もいれば、メールに反応する人もいるだろう。連絡する最適なタイミングは必要なアクションの2週間前、あるいは2日前かもしれない。