サマリー:JTBパブリッシングがリリースした「るるぶ+」は、旅の計画自体をエンタテインメントに変える可能性を持つデジタルサービスであり、そこから生まれる新たなデータは、るるぶのブランド価値をさらに高めそうだ。

旅行ガイドブックの代名詞『るるぶ情報版』の発行元であるJTBパブリッシングは2024年4月、新たなデジタルサービスをリリースした。旅の計画段階からユーザーとつながるこの新サービスは、同社の事業領域とるるぶのブランド価値を拡張すると同時に、旅行業界全体に貢献するデータプラットフォームとなる可能性を秘める。このデジタル変革を構想段階から支援してきたのが、プレイドの事業開発組織「STUDIO ZERO」(スタジオゼロ)である。

旅行の計画に伴う“負”を無形資産×デジタルで解消

 JTBパブリッシングが立ち上げた「るるぶ+(プラス)」(*)は、ウェブサイトとスマートフォンアプリを通じて、るるぶのガイドブック数百冊から厳選したコンテンツを提供する新サービスである。同社社長の盛崎宏行氏は、「『るるぶ+』のリリースは、デジタル技術とデータを活用した事業領域拡大の第一歩です」と語る。

 2023年にブランド誕生50周年を迎えたるるぶは、これまで通算約6300巻が発行されており、2010年には発行点数世界最多の旅行ガイドシリーズとしてギネス世界記録に認定された。文字通り、旅行ガイドブックの代名詞的な存在だ。

 るるぶには、「見る・食べる・遊ぶ」という旅の行動要素に関する情報が満載されており、読む者に旅のワクワク感を抱かせる。その親しみやすさや情報の信頼性、読者を楽しませる編集力などによって、圧倒的なブランド力を築き上げてきた。

 それを象徴するのが、旅行以外の分野での新企画のヒットだ。るるぶでは、「見る・食べる・遊ぶ」に加えて、読者の知的好奇心を刺激する「知る・つくる・学ぶ」という新機軸を打ち出しており、『るるぶ宇宙』『るるぶ御翔印で楽しむ空港さんぽ』などのテーマ型、『るるぶ マンガとクイズで楽しく学ぶシリーズ』といった知育型などさまざまな図書を発行。さらには『るるぶエヴァンゲリオン』『るるぶ原神』といったアニメやゲーム、YouTuberやテレビ番組などとのコラボレーション企画で新たな読者を獲得し、ブランドのリーチをさらに広げている。

盛崎宏行氏
Hiroyuki Morisaki
JTBパブリッシング
代表取締役 社長執行役員

 一方で、紙媒体に共通する課題も抱えてきた。読者のデジタルシフトである。「旅の目的地が決まってからるるぶを購入されるお客様は多いのですが、目的地を決める情報収集の段階ではネットの利用が主流になっています」(盛崎氏)。