CSが機能してこそ、商品・サービスが本来持つ提供価値が発揮される

野村 CS本部としての今後の課題については、どうお考えですか。

堀野 大きくは2つあると思っています。一つはウェブサポートと電話サポートをよりシームレスにつなぐことです。そのために、いま「RightConnect by KARTE」の導入を進めています。

 RightSupportとRightConnectを連携させることで、コールセンターのスタッフはお客さまが当社のウェブサイト上でどのページを閲覧してから電話をかけてこられたのかを把握したうえで、応対できるようになります。たとえば、キャッシュカードに関するお問い合わせページから、紛失手続きに分岐した後で電話をかけてこられたといったことが一目でわかります。

 これは、医師が問診票を見ながら診察するようなもので、より短時間でスムーズな問題解決が可能になります。コールセンターを運営する側の視点で言うと、お客さまのお困り事の内容や解決の難易度に合わせて、適任のスタッフをアサインすることができます。

 また、お客さまがスマホやPCでいまどのページをご覧になっているのかをリアルタイムで確認しながら応対することもできますので、電話による聴覚情報にスマホやPC上のお客さまの行動という視覚情報を重ね合わせて、お客さまのお困り事の解像度を格段に高めることができると信じています。

 もう一つの課題は、先ほども述べましたが、VOC(お客さまの声)を各事業部門に届け、改善につなげるというCS本部としてのミッションをいかに遂行するかということです。

田中 そこは会社として大きく期待しているところです。事業部門に任せっぱなしだと、プッシュ型でどんどん情報を発信してしまってお客さまに嫌がられたり、売り手都合のUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)になったりしがちです。

 私は経営企画部門の担当役員としてauじぶん銀行に着任してから、VOCを全社員が見られる仕組みや、VOCへの対応策を各事業部門が毎月まとめる制度をつくりました。こうした仕組みや制度を十分に活かせるかどうかは、CS部門の肩にかかっています。

野村 私たちがCS領域でビジネスをしていてつくづく感じるのは、CS部門は縁の下の力持ちと思われがちですが、CSがしっかりと機能してこそ、商品・サービスが持っている本来のポテンシャルや提供価値が発揮されるということです。加えて、先ほど田中さんがおっしゃったように顧客の期待を超えるような商品・サービスを生み出す起点にもなりえます。

野村修平
Shuhei Nomura
RightTouch 代表取締役

 たとえば、お客さまがウェブサポートだけで困り事を自己解決し、プロダクトやサービスを使っていただける仕組みを構築できると、コンバージョン(会員登録や成約などの成果)が上がり、LTV(顧客生涯価値)も高まることがさまざまな調査からわかっています。

 これまではそれを定量的に語ったり、データで示したりすることが技術的に難しかったことも事実です。私たちはその壁をテクノロジーで乗り越えることで、CSを経営の中核に位置付け、ビジネス成長を支援していきたいと考えています。

堀野 これまで当社の事業部門やCS部門は、何らかの施策の結果をお客さまの視点で検証する機能が弱かったと思います。でも、RightSupportという新たな武器を得たことで、施策によってお客さまの行動がどう変わったかを、データで検証することが可能になりました。これからは、データを共通言語にしながら、事業部門との議論を深められます。

 また、今後は単にVOCを社内に届け、所管部に改善を迫るだけでなく、RightSupportを活用し、商品やサービスのウェブ表記・構成を「このように変えませんか」という提案を事業部門に行うことを考えています。広義のVOCの改善は全社で取り組む体制と体質、意識の醸成が必要です。CS本部として全社を巻き込み、お客さまに真摯に向き合う組織能力を高めていきたいと思います。

田中 社員全員がお客さま視点で考え、お客さまの期待を超えられるかどうかは、最終的には経営者のコミットメントにかかっていると思っています。私自身が一人の顧客として、auじぶん銀行をメインバンクとして使いたいかどうか。それを基準にすべてを判断しなければならないと心に決めています。

野村 RightTouchはB2Bの業態ですが、クライアント企業の先にいるお客さまの視点を忘れてはいけない、私たち自身がB2B2Cの意識を持たなくてはならないことを2人のお話を伺いながら、あらためて認識しました。

 企業が経営のリソースとしてVOCをより有効活用できるようにすることが、私たちの最重要課題です。そこにいっそう注力しながら、御社が期待を超える金融へと進化する原動力の一つになることを目指したいと思います。

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