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インターブランドジャパンの「顧客体験価値(CX)ランキング2022」で第1位を獲得した丸亀製麺は、既存店売上高が2024年8月まで35カ月連続で増収となるなど、顧客からの熱烈な支持によって事業成長を続けている。その親会社であるトリドールホールディングスは、企業理念から戦略、マーケティングまで、すべてが感動体験に結びつくようにデザインしているが、2024年春からは丸亀製麺の国内全店で食事体験後の顧客の感情をデータで可視化する取り組みを始めた。その先にどのような体験価値を創造しようとしているのか。感情データ可視化の仕組み構築を支援したプレイドの阪茉紘氏と竹村尚彦氏が、トリドールのCMO(最高マーケティング責任者)である南雲克明氏に聞いた。
あえて二兎を追う「KANDOトレードオン戦略」
阪 最初に南雲さんの職務について簡単にご紹介いただけますか。
南雲 トリドールホールディングスの執行役員CMOとKANDO(感動)コミュニケーション本部長、事業子会社である丸亀製麺の取締役マーケティング本部長を兼務しています。
KANDOコミュニケーション本部には、マーケティング部、コーポレートコミュニケーション部、インターナルコミュニケーション部、ブランド戦略部の4つの部があり、内外のコミュニケーション全般を統括しています。
阪 丸⻲製麺は、事業活動の中心に「食の感動体験」を置き、成⻑を続けています。感動体験を重視する背景を教えてください。
南雲 CEOの粟田(貴也社長)は、創業の頃から一貫して「どうしたらお客様に来ていただけるか」を考え続けてきました。その結果、思い至ったのが、感動体験があるからこそお客様がわざわざ店に足を運ぶ動機が生まれるということです。
私はB2Cのマーケティングに長く携わる中で、お客様の心が動く瞬間に物やサービスの購買につながることを実感していましたが、7年前に粟田に会った時に感動体験の話を聞かされ、「なるほど」と納得しました。
当社のスローガンは「食の感動で、この星を満たせ。」、ミッションは「本能が歓ぶ食の感動体験を追求し世界中をワクワクさせ続ける」であり、企業理念や戦略、事業活動のすべてが感動体験に結びつくように設計されています。マーケティングにおいても、感動を起点に感性とデータサイエンスの両面からお客様に選ばれる確率を高める「感動ドリブンマーケティング」を推進しています。
阪 感性とデータなど通常は背反すると考えられがちな二律を両立させるのが、御社の戦略の基本ですね。
南雲 当社では「KANDOトレードオン戦略」と呼んでいますが、僕は社内でいつも「二兎を追え」と言っています。本質的価値の追求と新しい体験価値創造の両立、その象徴が「丸亀シェイクうどん」や「丸亀うどーなつ」といったヒット商品です。