だが、せっかく新しいツールを導入したのに、思ったほど成果が挙がらないとか、現場での活用が進まないといった課題に悩む企業も多いようだ。

「世界的にはスタンダードでも、その機能が日本企業の組織のあり方や、業務のやり方にマッチしているとは限りません。自分たちが、日頃どんな仕事をしているのかを棚卸しすることなく、無理やりツールに合わせようとするからハレーションを起こしてしまうのではないでしょうか」と語るのは、ULXマネジャーの小澤未来氏である。

ウルシステムズ
ULX(戦略・BXユニット)マネジャー
小澤未来
Miku Ozawa

「自社の強み」を活かした変革になっているか

 スタンダードに無理に合わせようとすると、むしろ日本企業本来の強さを損なってしまうおそれもあるという。

 一般に日本企業には、部門や部署ごとに多彩な業務のバリエーションが存在し、事業と業務を管理するためにカスタマイズされ、複雑化した業務システム群が存在する。

「それが情報のサイロ化や、業務プロセスの断絶といった非効率につながっているのは事実です。その一方で、部門・部署ごとの業務やシステムは、それぞれの強みを凝縮する形で進化を遂げたものばかりです。標準化によって強みを支える機能を削ぎ落としてしまうことが、はたして賢明なのかどうかを、ツールの導入前にじっくりと検討すべきでしょう」

ウルシステムズ
ULX(戦略・BXユニット)マネジャー
常本貴紀
Takanori Tsunemoto

 そうアドバイスするのは、ULXマネジャーの常本貴紀氏だ。

 では、どうすれば「自社の強み」を温存・強化しながら、現場に受け入れられるデジタル変革を進めていくことができるのか。