関係性の質を高めるプロジェクトコーチング

 多くの企業で、気づかないうちに不活性なプロジェクトが増殖しているかもしれない。経営層にとっては、見過ごせないリスクである。では、プロジェクトにおいて主体性を維持・強化するためにどのようなアプローチが求められるだろうか。

「プロジェクトにおける関係性の質に注目する必要があります。関係性の質を高めることにより、成果を生み出しやすくなります。プロジェクトに近い組織形態であるティール組織においては、第三者のコーチの伴走で成果を生み出した事例が多く報告されています。同様に、プロジェクトにコーチが伴走することで関係性の質を向上させ、個々のメンバーの主体性を強化できます」と森氏は語る。

 こうした考え方をもとに、EYストラテジー・アンド・コンサルティングは、関係性を起点としたプロジェクトコーチングを提供している(図表)。プロジェクトコーチングはチーム全員が参加し、プロジェクトワークと並行して実施する。コーチ役は森氏をはじめとするコンサルタント。1~2週間に一度、一回につき最低60分というのが一般的なスタイルだ。その内容には大きく3つの柱がある。

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図表 関係性を起点としたプロジェクトコーチングの要諦

「第1に、プロジェクトの共通目的や指針の構築支援です。最初に、プロジェクトのビジョンやチームにおける協力関係のあり方、相互の役割などについて、各メンバーが話し合い確認しておくことが重要です」と森氏。当たり障りのない結論に到達するプロジェクトでは、こうしたプロセスが省かれることが多い。遠慮のない議論が求められているのに、メンバーが誰かの立場を過度に忖度した発言に終始するという具合だ。

 第2に、メンバーの建設的な発言を促し議論の活性化を支援する。「これを言うとバカにされるかも」「役職者の批判と受け取られるのでは」などと考え、発言をためらうメンバーもいる。これでは議論の活性化は期待できない。

「まず、各メンバーの人間性や価値観をチーム内で表出させ、違和感や主観的な物の見方をも共有できる安心・安全な環境をつくる。心理的安全性を確保するということです。そのうえで、各メンバーが相手を理解し、本音で関わる対話の流れをつくり、多角的に物事を捉えられるようコーチは支援します」と森氏は言う。