
代表取締役CEO
木内翔大氏
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2022年秋のチャットGPT登場でAIが身近になった。2025年は従来の対話型AIを超え、自律学習・判断で業務を遂行する「AIエージェント」が注目される“AIエージェント元年”と呼ばれる。AIエージェントがビジネスと社会を根底から変革し、国際競争力を左右すると強調する大手IT企業経営者もいる中、日本の生成AI活用は世界に後れを取っているのが現実だ。「日本をAI先進国に」を掲げ、AI基盤のオペレーショナルエクセレンスで競争優位を築く「AI経営」を提唱するSHIFT AIに、“全社員AI人材化”によるAI経営実現のアプローチを聞いた。
AIを個別業務に組み込み、圧倒的競争優位を確立する
ナレッジワーカー(知的労働者)が生成AIを業務で活用している割合は、世界平均75%に対し、日本は32%。これは米マイクロソフトとリンクトインの共同調査が示した数字である(*)。調査対象の40カ国・地域でフィリピンやメキシコを下回り、日本は最下位だった。
*「2024 Work Trend Index Annual Report」(Microsoft and LinkedIn, 2024年5月)
「全社員が生成AIの活用ノウハウを身につけ、AI経営の推進に一刻も早く取り組まないと、日本はさらに取り残されてしまいます」。SHIFT AI代表取締役CEOの木内翔大氏は、そう警鐘を鳴らす。
同社が提唱するAI経営とは、一つひとつの業務にAIを組み込むことによって業務プロセス全体を最適化し、強い仕組みと組織をつくり上げるオペレーショナルエクセレンスによって競争優位を確立する経営である。
木内氏は、「中国のアントグループや米アマゾン・ドットコムをイメージすればわかりやすい」と説明する。決済サービス「アリペイ」(支付宝)で知られるアントは、AIによるスピーディな与信審査によって小口融資事業を大きく伸ばした。アマゾンの短時間配送や的確なレコメンデーション(お薦め)もAI抜きでは実現できない。
「両社はAIを基盤とするオペレーショナルエクセレンスによって、価値提供のスピードとクオリティを圧倒的に高めています。それが同業他社に比べて群を抜く競争力の源泉となっています」(木内氏)
AI経営を実践できているのは、いまのところビッグテックなどごく一部の企業に限られる。日本企業もまだ間に合わないわけではないが、AIを業務に組み込み、スピード感をもって事業を運営できるAI活用人材の不足が最大の課題だ。
生成AIの大きな利点の一つは、ITやプログラミングの専門知識がなくても、プロンプト(自然言語による指示)を入力するだけで、誰でも活用できることだ。つまり、きちんとした教育を行えば、〝全社員AI人材化〟はけっして夢ではない。
実際、会社による環境整備や研修が行われなくても、一部の人は仕事で生成AIをどんどん使い始めている。それによって業務効率化が進む半面、正しいセキュリティ知識がないままに使用場面が増えると、情報漏えいや権利侵害といったリスクが高まる。他方、自分の業務に生成AIをどう役立てればいいのかわからない人は、いつまで経っても活用が進まない。
つまり、全社員AI人材化によってAI経営を実践していくには、業務に適した具体的な生成AI活用スキルやセキュリティ知識などを習得させる体系的な教育プログラムを構築し、AIの進化などに応じて常にアップデートしていくことが必須要件となる。