【HBR CASE STUDY】

[コメンテーター]
サンドラ・ソロベイ
(Sondra Solovay)弁護士
エイミー・ウィリンスキー(Amy Wilensky)コンサルタント
ハワード・ウェヤーズ(Howard Weyers)ウェイコ 社長兼CEO
マーク V. ローリング(Mark V. Roehling)ミシガン州立大学 准教授

[ケース・ライター]
ブロンウィン・フライヤー
(Bronwyn Fryer)HBR シニア・エディター
ジュリア・カービー(Julia Kirby)HBR シニア・エディター

*HBRケース・スタディは、マネジメントにおけるジレンマを提示し、専門家たちによる具体的な解決策を紹介します。ストーリーはフィクションであり、登場する人物や企業の名称は架空のものです。経営者になったつもりで、読み進んでみてください。

優秀な肥満児

 ビル・ホウグランがスプレッドシートの3枚目に没頭していると、のっしのっしと歩く足音が聞こえてきた。そこは、営業マーケティング部とデスクトップ・パブリッシング部を渡す廊下だった。「シドのお出ましだ」。ビルはすぐわかった。

 NMOファイナンシャル・サービスのシアトル支社のビルは埠頭に立っており、何十年も風雪にさらされてきた。そのせいか、トラックの往来はおろか、体重180キロのシド・ショーンの足音にもいちいち反応する。

 そのシドは足を止め、ドアが開いたままのオフィスをのぞき込んだ。

「どうだい、シド」とビルが声をかけた。シドの額にはうっすらと汗がにじんでいる。息切れしているらしい。