イノベーター企業のキーマン、“ナレッジ・ブローカー”

 世界各国のCEO(最高経営責任者)に、いま最も望んでいることを5つリストアップしてもらったとしよう。

 そこに、「より優れたアイデアを、もっとたくさんほしい」という類の希望が入っていることは、まず間違いないだろう。これがトップに挙げられている可能性も高い。

 なぜなら、CEOは、ニュー・エコノミーの追い風に乗るためには、アイデアやイノベーションが最も貴重な通貨であることを認識しているからだ。このことは、オールド・エコノミーにおいても、徐々に妥当性を増してきている。いまや、アイデアが次から次へと湧いてくるようでなければ、企業は衰退する運命にあると言える。

 我々は、過去5年間にわたって、絶えずイノベーションを起こしている企業を研究してきた。その結果、ビジネスリーダーにとって、朗報と言える事実が判明した。

 それは、「最も優秀なイノベーター企業は、新しいアイデアを生み出し、それを検証する方法を体系化している」ばかりか、彼らの作り出したシステムは、「実務上、どこの企業でも複製が可能である」ということだ。

 なぜなら、このシステムでは、「どんな組織を作るのか、どんな姿勢で取り組むのか」ということが問題で、稀に見る天才を養成することとはほとんど無縁だからである。

 我々は、研究の結果、イノベーター企業に共通する2つの大きな特徴を見出した。

 第1に、最も優秀と言われるイノベーター企業は、既存のアイデアを、続々と新しいアイデアを生み出すための原材料として体系的に活用している、ということだ。我々は、こうした戦略を「ナレッジ仲介」(knowledge brokering)と名づけている。

 この戦略を実践している企業は、バラバラに散在しているアイデアをつなぐ媒介者、すなわちブローカーとしての機能を有している。中間者、すなわち客観的な視点を持っているという彼らの優位性を利用して、既存のアイデアのなかからこれまでとは違った場所、斬新な方法、そして新たな組み合わせで活用できるものを見極める。

 もちろん、「ある分野では当たり前になっているアイデアを取り入れて、それをまったく馴染みのないような分野に移植する」という方法は、創造性を発揮する手段として目新しいものでも何でもない。技術革新の歴史をひもといてみれば、そのような例は無数に存在していることがわかる。