さらに、日本企業は投資判断そのものにも課題を抱えていると続ける。

「AI投資は不確実性が大きいため、ROI(費用対効果)に基づいた従来型の基準では本質的な投資ができません。また、現場任せのAI活用では各部署に閉じた小さな効率化にしかなりません。今必要なのは、経営陣が主導して組織横断でAIによる変革を起案し、経営の意思としてAI投資と変革を主導することです」

 AIをどう捉えるか。企業の現場ではいまだに共通理解が定まっていない。

 同社SVP& Chief Officerのジョン・ラーソン氏は、「AIを使えば単調な業務を減らし、社員が創造的かつビジネスインパクトのある仕事に集中できるようになります」と語る一方で、AIを単なる効率化の手段としてではなく、知識と価値創造を広げる基盤として捉えるべきだと語る。

 “AIの普及によって人の仕事が奪われる”と語る声もあるが、両氏ともその見方を否定する。武藤氏は「AIは業務効率化やコスト削減に留まらず、人にしかできない価値を高めるツールになりうる。AIを組み込むことで人が本来の価値を創出できる業務に集中し、ビジネス全体の価値を飛躍的に向上させることができる」と話す。

SYNTHESIS Founder & CEO
武藤 惣一郎氏 SOICHIRO MUTO

AIトランスフォーメーションの成功のカギは経営者自身にある

 武藤氏はさらに、AIを業務変革と結びつけることの重要性を強調する。

「AI活用の本質は“何を変革したいのか”を描くこと。お客様にどんな価値を届けたいか、そこから逆算して、AIをどこでどう使うかを決める必要があります」

 自社の組織の仕組みをAIファーストに変革できるかどうかが、その企業の競争力となる。そのため“AI人財”の育成も急務だろう。

 しかし、日本企業ではシステム部門やエンジニアが軽視され、給与や地位も低く抑えられてきた。武藤氏は、その状況を根本から改める必要があると指摘する。

「テクノロジーがビジネスを形づくる時代において、デジタル人財を2軍扱いするのは完全におかしい。営業で成果を出す人と同等かそれ以上の評価・報酬を受けるべきです。役員にも半分以上はデジタルに精通した人財がいなければならない。リーダーシップのあり方から変えていかなければ、優秀な人財を引きつけることはできません」

 ラーソン氏は、AI人財を育てる第一歩として意欲的な社員に機会を与えることが重要だと説く。

「好奇心を持った社員にツールと予算を与え、一定のガードレールの中で“自由に使わせてみる”ことも必要です。そうした取り組みからベストプラクティスやロールモデルが生まれ、文化が醸成されていきます」

 経営者も、自社のAIやデジタル活用は、情報システム部門に任せる話ではなく、経営そのもののあり方を変える課題だと認識すべきだろう。

SYNTHESIS SVP & Chief AI Officer
ジョン・ラーソン氏 JOHN LARSON

人と組織を起点に変革の伴走をする

 AIの進展は、コンサルティングのあり方そのものを再定義する。

 従来は課題を定義し、ソリューションを設計・提示することがコンサルタントの主要な役割だった。大手ファームはその規模とリソースを強みに、体系化された手法を数多くのクライアントに展開してきた。だがAIが高度化する中で、こうした役割は急速に縮小していく。

 武藤氏は「近年のコンサルティングはソリューションづくりに大きな比重が置かれてきました。今後は正しい問いを立てる力、変革を実現するために人・組織を動かすリーダーシップに価値がシフトしていくでしょう」と語る。

 ラーソン氏も「人は状況を理解し、信頼を築き、変革を実行して価値を生み出す能力において、決して代替できません。AIは幅広い知識を持つ驚異的なツールですが、単体では不十分なのです」と強調する。

 そこでSYNTHESISが提唱するのは「ダンベル型モデル」だ。片方の重りは「問いを立てる力」、もう一方は「人・組織のエンパワーメント」。その両端を強くする一方で、中間の「ソリューションづくり」はAIが肩代わりしていく。

 結果として、汎用的な知識・スキルを大量投入する従来型のモデルは競争力を失い、専門性と人間力を兼ね備えたコンサルタントが求められるようになる。

 この文脈でのSYNTHESISの強みは明快だ。

 大手ファームが規模の論理で「解法の提供」に傾きがちな一方、同社は人・組織のエンパワーメントにまでつなげ、クライアントが自走できる変革をデザインする。その設計思想は、他のファームとは一線を画す、まさに次世代型のコンサルティングの姿である。

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従来のコンサルティングはソリューションづくりに、多くの時間とリソースをかける必要があり、本質的な「問いたて」ができていない。
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それに対しSYNTHESIS が提唱するダンベル型コンサルティングはソリューションづくりにAIを活用することで抜本的に効率化・迅速化。「本質的な問いたて」と「人・組織のエンパワーメント」に力点を置く。

 人口減少や少子高齢化などは日本の避けられない現実だ。

 しかし武藤氏は「日本企業は大きな潜在力を抱えている」と語る。制約を逆手に取り、一人ひとりの付加価値を高めることで新たな競争力を築けると説く。

「挑戦には勇気とエネルギーがいるが、志ある人とともに挑戦したい」という武藤氏の言葉が示すのは、変革の伴走者としての強い意志だ。AI導入の難しさを経験している経営層ほど、SYNTHESISの姿勢が響くに違いない。

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