【出席者】
フィリップ・コルドウェル(Philip Caldwell)元フォード・モーター会長兼CEO
ジョージ D. ケネディ(George D. Kennedy)アメリカン・ナショナル・キャン・カンパニー取締役
G. G. マイケルソン(G.G. Michelson)ゼネラル・エレクトリック取締役
ヘンリー・ベント(Henry Wendt)元スミスクライン・ビーチャム会長
アルフレッド M. ザイエン(Alfred M. Zeien)前ジレット会長兼CEO

【司会】
ジェイ W. ローシュ(Jay W. Lorsch)ハーバード・ビジネススクール教授
ラケッシュ・クラナ(Rakesh Khurana)マサチューセッツ工科大学スローンスクール助教授

新しいCEOは、前任者ではなく取締役会が指名すべきである

 CEO(最高経営責任者)の選出は、取締役会が下す意思決定の中で最も重要なものの一つである。その理由は、企業の命運はCEOの手腕次第ということだけではない。CEOを選出するプロセスそのものが、従業員や投資家などステークホルダーたちの、企業やそのリーダーシップを見る目を変えてしまうからだ。また、CEOの選出は、経営陣全体に緊張感をもたらすことが多々ある。外部から来た場合など、なおさらである。

 その重要性は明白であるにもかかわらず、これまでCEOの選出方法についてはほとんど議論されてこなかったし、その対象にすらなっていなかった。後継者選びは、閉ざされたドアの向こうで進められてきたのだ。神父を選ぶことにたとえるコメンテーターがいたが、秘密裏に進められることが当然とされてきた。

 しかし、状況は変わってきている。CEOの役割が注目されるとともに、その権力が増してきた結果、その選出にも関心が集まるようになった。いまや、機関投資家やウォール街のアナリストなどが、CEOの選考責任者やその選出方法を丹念に調べ上げている。

 CEOの選出にさらなる透明性が求められるようになったことは、取締役会が果たす役割が基本的に変わったということである。これまでは、CEO自身が自分の後継者を選び、取締役会は単にそれを追認してきた。

 しかし今日、取締役会とCEOの関係は複雑になってきている。大規模なM&Aやグローバル競争が進展する時代において、取締役会が受け身であることは許されない。彼らは、企業が進むべき方向性を積極的に決めていかなければならないはずだ。

 なかでも、CEOの選出は最も厳しく監督すべき分野である。そのプロセスが厳格かつ慎重であり、しかも継続できるものか否か(おそらくこれが最も重要である)は、取締役会にかかっている。

 このような大きな変化を目の前にして、我々は先日、5名の著名な取締役たちと、CEOの選出に関して議論した。彼らはみな取締役を歴任し、CEOの選出に何度も立ち会ってきた。彼らのほとんどがCEOの経験者、あるいは現役のCEOである。