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ワン・トゥ・ワンの準備は万全か
ワン・トゥ・ワン・マーケティングを首尾よく実現できれば、顧客基盤の価値を高めることができる。
何も難しい話ではない。ワン・トゥ・ワン・マーケティングはリレーションシップ・マーケティング、あるいは顧客関係マネジメントとも呼ばれるが、つまりは顧客からの声などに基づいて、企業活動を「個客」志向へと変えようとする意志の表明であり、またそれを実現させるための能力である。
残念なことに、多くの企業が適切な準備をしないままに、ワン・トゥ・ワン・マーケティングという一種のブームに便乗してきた。だが、ワン・トゥ・ワン・マーケティングを実践する仕組みは複雑なのである。「個客」を特定・追跡し、密接な関係を作り上げたうえで、自社の商品やサービスをその「個客」のニーズに合わせて再構築するというのは、単にセールス・スタッフに人間味あふれるサービスや気配りを教育するということとは、次元の異なる話なのだ。
あなたの会社ではワン・トゥ・ワン・マーケティング・プログラムを実践する準備が整っていると言えるだろうか。「それはプログラムの規模による」という答えが大方だろう。
ワン・トゥ・ワン・マーケティングを導入することも一つの実験、と考えている企業もある。特定の部門で、少しずつであれワン・トゥ・ワン・マーケティングへのステップを踏んでいくことで、大きなメリットが得られるというわけだ。またその一方で、企業全体でワン・トゥ・ワン・マーケティング・プログラムを実践していこうという企業もある。
少なくとも、どのようなタイプのプログラムから手を着ければよいのか、そしてその準備として何をしなければならないのかを自己診断する必要がある。そのために、我々はさまざまな活動をリストアップし、すべての役員、管理職、従業員、さらには顧客や流通関係者までを想定した課題を作ってみた。
すぐにスタートできるワン・トゥ・ワン・マーケティング・プログラムとはどのようなタイプのものか。その規模を広げていくには何が必要か。計画と活動には、どのようなプライオリティを付けていけばよいのか。このリストを読んで、課題に挑戦してみれば、きっとわかるはずだ。
なぜワン・トゥ・ワンへの取り組みが必要なのか
どの程度の規模でワン・トゥ・ワン・マーケティング活動を行うかを決める前に、なぜワン・トゥ・ワンに取り組むべきなのかという根拠と、この戦略を構成する基本要素について理解しておかなければならない。
ワン・トゥ・ワン・マーケティングの根底にある理念とは、最重要顧客を手始めとして、顧客一人ひとりから何かを学び取れるような学習関係(learning relationship)を確立することにある(DHB1995年7月号掲載、ジョセフ・パインⅡ世、ドン・ペパーズ、マーサ・ロジャーズ「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」を参照)。
ここで言う学習関係とは、顧客と何らかの接触を重ねるたびに洗練の度合いが高まっていく関係、と定義しておこう。



