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法人顧客の満足に貢献する顧客価値モデル
価値とは何か。いかに定義すればよいのか。そもそも測定できるものなのだろうか。提供する製品やサービスは、本当のところ、顧客にどのような価値をもたらすのだろうか。これらの問いに答えられる企業は法人市場(Business to Business)の場合、信じがたいほど少ない。
その一方で、製品やサービスが顧客企業にもたらす価値を正しく把握する力は、何にも増して重要となっている。法人顧客、特に何を仕入れるのかによってトータル・コストが大きく変動する企業の場合、購買活動こそ利益増大の源泉と考えて、仕入れ業者たちに価格をさらに引き下げるように求める傾向が強くなっている。
法人顧客の多くは、購買費のみならず、トータル・コストに注目している。このような企業を説得するためには、その法人顧客が、現在あるいは将来において、何に価値を見出しているのかを、明確に理解しておかなければならない。
ここで、あなたが青果栽培業を営んでいると仮定してみてほしい。いま2社の業者からマルチ・フィルムの売り込みを受けている。マルチ・フィルムとは、薄いビニール・シートで、地面にかぶせて湿気を逃さないようにしたり、雑草が生えるのを防いだりする製品である。これを使えば、狭い土地でもメロンを栽培できたり、野菜の収穫量を増やすことができる。
業者の一社は、次のような提案を持ちかけている。「我々を信頼してください。当社のマルチ・フィルムを使えばコスト低減につながります。費用対効果の高い取引を約束します」と。
もう一つの業者は、「当社なら、御社のマルチ・フィルムのコストを、1エーカー当たり16.83ドル低減させることができます」と述べて、その仕組みを詳しく説明してくれる。
どちらの提案がより説得力にあふれているだろうか。この場合の答えが自明であるようように、法人顧客というものは必要なものは何かを心得ている。しかし、数ある製品やサービスのうちどれが本当に(自社にとって)価値あるものなのかについて、正しく理解しているとは限らない。
そして、このような理解不足こそ、製品やサービスの価値を提示し、賢明な意思決定が下せるように顧客企業をサポートする絶好の機会なのだ。
顧客企業は、何に価値を見出しているのか、何に価値を認めるのだろうか。このような情報や知識を収集し、これを拠り所にすれば、競合他社よりも優位な立場を確保することができるはずだ。このように行動する企業は、いまだ少ないとはいえ、今日確実に増えつつある。
これらの企業は、我々が「顧客価値モデル」と呼ぶモデルを構築している。これは、データに基づきながら、顧客企業に何を提供し、何を実現できているのかを、実際の金額で換算するものである。したがって、これによって、製品やサービスが顧客企業のコスト削減と利益増大にどれくらい貢献しうるのかが評価される。



