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「自己をマネジメントする」時代
ナポレオン・ボナパルト、レオナルド・ダ・ヴィンチ、アマデウス・モーツァルトのような偉人は、自己をマネジメントしたからこそ、偉業を成し遂げた。もちろん彼らは例外であって、才能にせよ、業績にせよ、常人の域をはるかに超えた。
ところがこれからは、普通の人たちも、自己をマネジメントできなければならない。自己の力を発揮していかなければならない。大きな貢献が可能な適所に自己を置かなければならない。
職業生活は50年にも及ぶことになる。その間、生き生きと働けなければならない。自分の仕事をいつ、いかに変えるかさえ知らなければならない。
自己の強みは何か
自己の強みと信じているものは、たいていが見当違いである。知っているのは、強みならざるものである。それさえ見当違いのことが多い。何事かを成し遂げるのは、強みゆえである。弱みによって何かを全うすることはできない。もちろん、できないことから成果を生み出すことなど、とうていできない。
人類の歴史において、ほとんどの人たちにとっては、自己の強みを知ったところで意味がなかった。生まれながらにして、地位も仕事も決まっていた。農民の子は農民となり、職人の子は職人になった。
ところが今日では、選択の自由がある。したがって、自己の適所がどこであるかを知るために、自己の強みを知ることが必要になっている。
フィードバック分析
自己の強みを知るには、フィードバック分析しかない。すなわち、なすべきことを決めたり、始めたりしたならば、具体的に書き留めておくのである。そして9カ月後、1年後に、その期待と実際の結果を照らし合わせなければならない。私自身、これを50年続けており、そのたびに驚いている。
私の場合、たとえば、エンジニア、会計士、マーケット・リサーチャーなどのスペシャリストについては、その仕事の本質を直感的に理解できることがわかった。逆にゼネラリストについては、直ちに理解はできないことがわかった。
このフィードバック分析は新しい手法ではない。14世紀にドイツの無名の神学者が始めたものである。その150年後、ジャン・カルヴァン(1509~1564年)とイグナチウス・ロヨラ(1491~1556年)が、奇しくも同時に採用し、それぞれの弟子たちに実行させた。彼らの創設したプロテスタントのカルヴァン派やカトリックのイエズス会が、わずか30年で支配的な力を持つに至ったのは、この手法によるところが大きかった。なぜなら、仕事と成果への集中をもたらしたからである。
このフィードバック分析を実行に移すならば、2、3年という短期間に、自己の強みが何であるかが明らかになる。自己について知るうえで、強みを知ることこそが最も重要である。しかも、すでに行っていることや、行っていないことのうち、自己の強みを発揮するうえで邪魔になっていることまで明らかになる。もちろん得意でないこともしかりである。まったく強みが発揮できないこと、不可能なことも明らかになる。



