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欧米の多くの経営者は、IT(情報技術)の重要性に気づいているものの、それを戦略的なビジネスツールとして使いこなしているとはまだまだ言えない状況である。そして、彼らのITに対する不満は、たいてい次の5つの問題に類型化される。
1. ITへの投資と事業戦略が結びついていない。
2. ITへの投資とそこから得られる収益が見合っていない。
3.「技術のための技術」が多すぎる。
4. 情報システム・ユーザーとITスペシャリストの交流が乏しい。
5. システム設計者がユーザーの意向や業務習慣を理解していない。
これらの問題はいまに始まったものではなく、過去15年間にわたり議論されてきたものである。企業はその解決のために数百万ドルをコンサルティング・フィーとして支払ったものの、金額に見合う成果はほとんど得られていない。これらの問題に対してどのように切り込んでよいかわからないため、ITに対する最近の経営トップの姿勢や経営方針は、極端なものとなっている。たとえばある企業では、期待外れに終わることが多いにもかかわらず、外部協力者のほうがもっと上手に情報システム部門としての機能を果たしてくれると思い込んで、できる限り多くの情報システム関連業務をアウトソーシングしている。また、なかには「パワー・ユーザー」という名の新しい世代が、ラップトップ・パソコンやインターネット・ブラウザ・ソフトウエア【(訳注1)】に組み込む創造的なソフトウエアを開発して、助けに来てくれるのではないかという妄想にとりつかれている企業もある。ある企業の幹部が「情報システム部門をだれかなんとかしてくれ!」と声高に叫ぶのを耳にしたこともあるくらいだ。
どうしてこのような混乱が生じているのだろうか。それはおそらく、かつてITがもてはやされたり、恐れられたりしたからだろう。経営者たちは、ITを戦略レベルまで高めよと主張する一方で、ITをビジネスの目標と統合することがエベレストの頂上に登るのと同じくらい困難であることに気づいている。ITと事業目標の統合はけっして不可能なことではないが、いざ実行に移してみると非常に難しく、失敗の対価が高くつくものなのである。
欧米の経営者は、当面の問題から一歩身を引いてみるべきであり、ITを活用する際の課題にどう対処すればよいかをじっくりと考えてみる必要がある。欧米では、あまりに多くの経営幹部がITを管理する仕事に忙殺されている。彼らはITを使いこなすために特別な道具や戦略、そして特別な心掛けが必要に違いないと考えながら、ITを前にして緊張しすぎているのだ。むろん、そのようなものは必要ではない。ITは経営者が武器とするさまざまな競争戦術と同様に扱われるべきものなのである。



