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難解なオプション理論を現実の企業活動に平易に応用する
金融の世界で利用されるオプション取引と、一般の事業会社におけるビジネス・チャンスへの投資行動には、類似するところがある。ともに不確実性を伴うという点であり、今後注目が高まる領域だという点である。
R&D、マーケティング・プログラム、事業資本(たとえば工場の段階的な拡張など)に新規投資を行うことは、新製品や新市場を創造する「可能性」を高めるだろう。財務知識を備えたマネジャーがこの意味を理解することはたやすいが、そうでないマネジャーにはなかなか難しい。
金融オプションになぞらえれば、プット(売る権利)やコール(買う権利)について理解し、最終的な投資の意思決定へと至るまでの道のりは長く、ストレスのたまる仕事ということになる。
従来のディスカウンテッド・キャッシュフロー法(DCF)や、正味現在価値法(NPV)では実現できなかったことを「オプション・プライシング法」によって達成できると専門家たちは語っている。ありがたいことに、オプション・プライシング法については、多くの書物がその原理を平易に解説している。
しかし、マネジャーたちは、オプション・プライシング理論をプロジェクトに活用する方法、机上の計算を現実の数値として応用する方法を知りたいと思いながらも、最初の一歩で立ち往生してしまい、結局、その解決策を知ることはできないでいる。
なぜなら、残念なことに、博士号取得者向けに書かれた書物ばかりだからだ。つまり、実践的な数字に基づいた企業分析が少なく、応用しようとしてもコストがかかったり、理解しにくいものばかりなのである。
本稿は、資本政策に必要な実用性と、オプション・プライシング理論に用いられる高等数学の難解さとのギャップを埋めるものである。そのため定量データを作成し、さまざまなプロジェクトに援用できるばかりか、多くの企業の予算作成システムに使われているDCFスプレッドシートとの互換性を考慮した。ただし、非常に精緻な数字を提供することはできないことをあらかじめ断わっておく。
もし精度を追求するならば、金融技術を持つ専門家に頼らなければならない。しかし、本稿のフレームワークは、従来のプロジェクトで利用されてきた数値やDCF法で算出された数値よりも、はるかに有用である。ある程度精度を犠牲にしてでも、簡便さ、応用性、わかりやすさなどを追求したほうがよほど意味がある。
手始めに、一般的な投資機会、すなわち予算作成プロジェクトを吟味し、コール・オプションとの類似点を見つけてみよう。
まず、プロジェクトを評価するためのDCF法と、オプション・プライシング法とを比較してみる。両者の相違点は、分析する際、予想もできないような視点を提供してくれるが、ここでは共通点を重視する。なぜなら、本稿のフレームワークが理解しやすくなるばかりか、すでに親しまれている手法に応用するためのカギとなるからだ。



