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エンパワーメントの潜在的な有効性が喧伝されたため、昨今、経営幹部の関心が非常に高まってきている。企業経営に責任を持つだれもが、強く動機づけられた企業集団を求め、将来の業務展開の先兵にと目論んでいる。
あるCEOが述べるように、「有能で、広範な権限を持つ人材を得なければ、いかなるビジョン、いかなる戦略も実現はおぼつかない」のである。
経営幹部たちは、エンパワーメントされた人材を育て、獲得することを自らの役割と考えている。人事部の専門スタッフもまた、人間の内的意欲を引き出すべく、さまざまな理論、実践プランを案出し、提示している。
マネジメント手法の改善を教えるコンサルタントも存在するし、多くの企業で経営陣の号令の下、リエンジニアリングからTQM(全社的品質管理)まで、多様なプログラムが絶えず実施されている。しかし、いずれのケースについても、はかばかしい成果は得られていない。
リエンジニアリングを例にとろう。この分野における各種の謳い文句は、エンパワーメントの場合同様、きわめて巧み、華やかであるが、実際の結果はそうした美辞麗句を完全に裏切るものである。
種々の調査や現場の声が示すとおり、リエンジニアリングがベストの成果をもたらすのは、取り扱い業務の内容が厳密に規定されている場合であって、個々の現場担当者がその内容を自分で判断し、決めていかなければならないといった、あいまいな環境下においてではない。
GEのワークアウトでも、解決の対象として取り上げられた問題が、比較的ルーティンワーク的であるときに、最大の成果が得られている。リエンジニアリングの推進は、業務効率の向上、生産性の改善という面では効果があったが、企業の持続的な好業績を確かなものにするような、高度に動機づけられた組織メンバーを数多く生み出すという点では、見るべき成果を上げていない。
過去30年を振り返ってみて、エンパワーメントの面で大幅な向上、躍進が見られたと主張する経営幹部がいるとすれば、よほどのヘソ曲がりといってよいであろう。
しかし、こうした事態がなぜ起こったかについての解答は示されないままだった。その理由はけっして単純なものではないのである。



