賃金に対する意思決定を惑わす6つの神話

2つの小さな製鉄所があったとしよう。一方の支払う平均時給は18.07ドル、もう一方の支払う平均時給は21.52ドルである。手当てなど他の直接人件費が同じだとすると、どちらの労務費のほうが高いだろう?

 ある航空会社は、アメリカ市場の中でも低価格で贅沢なサービスを省いたセグメントで勝負しようとしている。こうした市場セグメントで競争に勝つためには、当然のことながら、労働生産性と効率がものをいう。同社は個人の業績などに基づく報酬を、事実上だれにも与えていない。この会社に成功の見込みはあるだろうか?

 ソフトウエア業界の中でも、競争の激しいセグメントで事業を展開しているある会社は、自社の販売部隊に歩合を支払っていない。個別の賞与も支払っていなければ、ストック・オプションやファントム・ストックといったインセンティブも与えていない(貴重なプログラマーの人材確保を大きく左右するため、ソフトウエア業界ではこれらの制度は一般的である)。あなたならこの会社に投資するだろうか?

 組織のリーダーたちは毎日のように、賃金に関する意思決定に直面している。企業の活性化に役立つ行動を引き出すために、自社の報酬体系を考え直すべきか? 業績に基づく賃金体系の設計には、コンサルタントの力を借りる必要があるか? どの程度の昇給を認めるべきか?

 一般的に言って、この種の疑問は、報酬に関する4つの意思決定事項に分類することができる。

・従業員にいくら支払うべきか

・報酬体系全体の中で、金銭的報酬にどの程度の重点を置くか

・賃金を抑えるための努力にどの程度の重点を置くか

・優れた成績や生産性に報いるためのインセンティブの制度を実施すべきかどうか、もし実施するなら、こうしたインセンティブにどの程度の重点を置くか